宝の地図?
「空き地」に通い始めて3日目。
昼間から夕方まで僕らはただその場所にいた・・・。
実君は無口でずっと何かを考え込んでいるような様子だ・・・。
この生活、俺はのんびりボーっとしているのは大好きなので苦痛にはならないけど・・・。
敷物の上でねっころがる・・・木の隙間からのぞく青空・・・・ああ・・・気持ちいいな・・・。
「お兄ちゃん、稔兄ちゃん」
体を揺すられ・・・気が付く。
視界に入ってきたのは実君の少し緊張した顔。
あ・・・いつの間にか寝ちゃってたんだ・・・。
起き上がり目をこする・・・。うわ・・・もう夕方だ・・・日が暮れ始めてる・・・。
「実君・・・こめんね寝ちゃって・・・」
「誰か来ます・・・」
え?
耳を澄ます・・・あ・・・本当だ・・・草を踏み分ける音がする。段々こっちに向かって来てる。
俺と実君は動きを止め、音のする方を見つめる。
がさっ!
木の陰から姿をあらわしたのは・・・男の人。
「・・・坊や達・・・ここで何しているの?」
ニッコリ微笑みながら俺たちに話しかけてきた。
見たところ30歳後半くらいの・・・優しそうな男の人・・・・。
背が高くて・・・うらやましく思った。顔もかっこ良いし・・・。
「えっと・・・」
「おじさんはどうしてここに来たの?」
俺が言葉を言おうとした時実君遮るように男に質問した。
「君達がここにいるのが見えて・・・何しているのかな?と思ってね」
男は笑顔を絶やさずそう言った。
実君はゆっくり立ち上がり男を見つめながら言った。
「何処から見ていたんですか?」
「何処って・・・・」
「道からは草や木でこんな所に人がいるなんてわからないはずです
見えるとすれば・・・・」
そう言ってマンションを見つめる。
男は少し苦笑いをし言った。
「ああ・・・俺はあそこのマンションに住んでいるんだ。俺の部屋からちょうど
ここが見えるんだよ」
実君はしばらく男を見つめ・・・静かに言った・・・。
「ねぇ、おじさん・・・ここに何か埋まっているの?」
実君、木の根元を指差し突然わけのわからないことを言い出した。
埋まっていたのは和之君のプレゼント・・・それだけじゃないか・・・。
男の顔は一瞬凍りついたが、すぐに笑顔になった。
でもその笑顔は無理やり作ったようなものだった。
「埋まってる?・・・何言っているんだい?坊やは・・・」
「・・・そうですか・・・おじさんは関係ないんですね・・・」
そう言って男の話を途中で遮り実君、帰り支度を始める。
「実君、帰るの?」
「はい」
俺も慌てて帰る支度をする。
男はそんな俺たちをじっと見詰めたまま動かなかった。
実君は小さなリュックを背負い、俺も手提げ袋に荷物を入れ終えた。
さて、帰ろうと思った時、立ったままだった男が言った。
「君達をこのまま帰すわけにはいかないんだ」
え・・・?
俺は男の顔を見る。・・・・男の顔はさっきまでの優しそうな表情はどこにもなく
・・・・・とても冷たい物だった・・・・。
男の豹変に俺は驚き数歩あとずさった・・・。
俺より少し後ろに立っていた実君はひるむ気配もなく
挑戦的な言葉を言う。
「おじさん、やっぱり僕に言われたこと、当たっているの?」
「坊や・・・」
「『坊や』なんてわざとらしい言い方しないでよ。僕のこと知っているんでしょ?」
男は冷たい笑いを浮かべながら実君を見つめる。
「小林実君・・・君は名探偵だね・・・何でわかった?」
「なんとなくだよ・・・そんな気がしただけなんだ・・・・」
俺は2人の会話についていけず、ただ男と実君を交互に見ていた。
実君は男から目線をそらさず話を続けた。
「ねぇ・・・僕のウチに空き巣に入ったのっておじさんでしょ?」
男はフっと小さくため息を付き笑った。
「その通りだよ。探し物をしていたんだ」
「探し物ってこれでしょ?」
実君はズボンのポケットから和之君が描いた地図を取り出して言った。
「僕のウチに空き巣が入って・・・子供部屋だってわかりきっている僕の部屋も荒らされてた。
一見他の部屋と同じように荒らされていたけど・・・かなり細かく調べた形跡があった・・・
そして和之君のプレゼント・・・1度誰かに開けられていた。」
実君はそう言うと丁寧に地図をたたみ、またポケットにしまった。
そしてうつむき小さな声で言った。
「僕は思ったんだ・・・もしかしたら和之君・・・この地図のために殺されたんじゃないかって・・・
和之君は犯人にとって『掘ってはいけない場所』にプレゼントを埋めてしまったんじゃないかって・・・」
えっ?・・・・俺は相変わらず何が何だかわからず混乱している。
地図のために殺された?和之君が?
実君はゆっくり顔を上げ・・・男を刺すような視線で見つめる。
「もし本当にそうなら・・・和之君を殺した犯人が次に狙うのはプレゼントを受け取る僕と、
この地図だから・・・この場所にいれば必ず犯人が現れると思ったんだ」
実君の言葉を聞き、男はニヤリと笑った。
「で、現れたのが俺ってことか・・・・」
実君は男を見つめ・・・無表情で言った。
「和之君を殺したのはおじさんだね?」
男は少しクスっと笑った後実君の質問にはっきりと答えた。
「全て君の言う通りだよ。小林実君」
2001.527