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宝の地図?

僕は絶対許さない
君をこんな目にあわせた奴を
絶対に・・・許さない

写真の中で笑う友達を想い
一人の少年の心が泣いていた





数日後・・・夕飯の席で母さんが言った。

「そういえば4号棟に空き巣が入ったらしいわよ」
父さんは眉間にしわを寄せた。
「そりぁ物騒だな」
俺は話をぼんやり聞きながらおかずのハンバーグに夢中になっていた。

「もうマンション中その話でもちきりよ。・・・それでね、とても面白いことがわかったの」
母さんがもったいぶりながら話を進めた。

「その空き巣に入られた家、小林って言うのよ」
俺んちと同じ名字か・・・ま、小林なんて山ほどいるからな・・・・。
そう思っていると母さんが俺を見て言った。
「しかも、そこの家の息子さん・・『みのる』君って言うのよ」
・・・ふ〜ん・・・同姓同名か・・・ちょっとビックリ。


「字は違うんだけどね。『実』って書いてみのる君。小学校1年生の一人っ子。
年齢こそ違うけどウチと同じ家族構成よね」
そう俺、一人っ子。

母さんは更に身を乗り出し言った。
「それにね、そのお家4号棟の8階・・・805号室なのよ!すごい偶然よね!」
805・・・・ウチも805号室。1号棟の805号室なんだ。
ウチのマンションは全く同じ外観で同じ敷地内に4棟建っている。
引っ越してきた当初はよく間違えて違う棟へ行ってしまったりもした。

ここで・・・俺は・・・・何かが引っ掛かった。





「あっ!!」
突然大声を上げた俺に母さんと父さんビックリし俺を見つめる。
俺はそんな視線を無視し、席を立ち居間へ走った。



『この前の水色の封筒・・・・・もしかして間違えてウチの郵便受けに入れられた物かもしれない!』
俺にしては珍しく気の利いたヒラメキだ・・・と思った。

居間の雑誌に混じってその封筒はまだ無事存在していた。

食卓に戻り母さんに水色の封筒を見せながら尋ねた。
「母さん。この封筒、いつ頃郵便受けに入ってたの?」

母さんは封筒をじっと見つめた後ポンッと手を軽く叩いて言った。

「確か・・・1週間くらい・・・前だと・・・思う。あんたに渡すのすっかり忘れていたわ!!」
心もとない返答。
俺は・・・・さすがに俺の母親だ・・・と思った。いつもは俺にしっかりしろだのシャキッとしろだの
言うくせに自分だってうっかりしてるじゃないか!!
母さんは開き直って笑いながら言った。
「変な封筒だわ・・・と思っていたのに忘れちゃうなんて稔のぼんやりが
伝染したのかしら!!」

人のせいにするなぁ!!・・・と心で反撃。
実際に反撃したら何十倍にもなって返ってくるとわかってるから・・・。

「これさ、どう見ても俺宛の物には思えないんだよね・・・。
この封筒にね、小さな子供が描いたような地図が入ってたんだ・・・・
だからもしかしたら・・・その4号棟の実君宛の物かも・・・と思ったんだけど・・・」

意見を求める。母さんも父さんも俺の意見に同意してくれた。
切手も住所も書いていない手紙。きっとこの『かずゆき』君って子が直接
郵便受けに入れに来て・・・間違えたんだ。


翌日俺は学校から帰りすぐに、4号棟の実君にその封筒を渡しに行った。


『4―805・・・小林』と書かれた表札を確認しチャイムを鳴らそうと手を伸ばした時
横から声をかけられた。

「お兄ちゃん・・・ウチに何か用ですか?」


声の方に目線を向けるとそこには小さな男の子が立っていた。

俺は突然声をかけられビックリしたのと・・・・その少年がとても綺麗な顔をしているのに
気を取られ、すぐに返答できなかった。
私立の学校に通っているのか制服に身を包んでいた。
白いシャツに赤いリボン、紺色の半ズボンをはいて帽子をかぶっている。
背中にはその小さな体には不釣合いのランドセルを背負っている。
背の小さな俺よりずっと小さく痩せている。色白でとてもサラサラした
茶色がかった髪の毛が綺麗に切りそろえられ、何より目を引いたのは
その大きな澄んだ瞳。人形のような男の子。

いつもは綺麗だとか可愛いだとかそんなことに全然気付かない
俺ですら見つめてしまうほど・・・・綺麗な子供だった。

黙っている俺に少年は首をかしげていた。


ようやく我に返り用件を話す。
「あの・・・君、小林実君?」
「はい。そうですが」

・・・とても小学校1年生とは思えない、しっかりした受け答え。
俺なんかよりよっぽどしっかりしているなぁ・・・・。

「あの・・・この封筒・・・君宛のものじゃないかと思って・・・」
そう言い水色の封筒を手渡す。
少年は封筒の『みのるくんへ』という文字を見つめ・・中の紙を取り出し地図を見つめた。


「・・・確かに僕宛のものです」
そう言い「わざわざ届けていただき、ありがとうございました」と
頭を下げた。
「いえ・・・こちらこそ届けるのが遅くなっちゃってごめんね!!」
俺も慌てて頭を下げる。


少年は封筒を大事そうにポケットにしまい家には戻らずクルっと向きを変えた。
エレベーターホールの方へ向かうようだ。
家には帰らず何処へ行くんだろう。
素朴な疑問。声に出して言ってみた。


「実君?何処行くの?」


少年は俺の方へ顔だけ振り向け言った。



「プレゼントを受け取りに行くんです」

そして少しうつむき小さな声で言った。
「かずゆき君が最後に残してくれた物だから」
2001.5.9

 


(ちょこっと後書き)
ここで私が何を狙っているのかわかった人・・・いるでしょうね(汗)
ど〜せ単純なお話しか書けないのよ〜!!わかった人は内緒にしててね(懇願)
今回登場の実君。声のイメージは・・・田中真弓さんを考えながら書いてます!!(田中さんのファン
の方ごめんなさい〜!!)田中さんのやんわりと小声で話す声を思い浮かべてます(汗)
銀河鉄道の夜のジョバンニのような声♪
追加・・・P:M9:00・・・旦那から「これは推理物じゃない」と言われ、私もそう思った(汗)
      じゃあ・・・これは・・・ミステリー・・・・?このお話のラスト、決めましたが、2通りの
      どちらにしようか迷っています。1つは無難にまとめる。もう1つは・・・すごく重い
      テーマを抱えることになりそう・・・。(しかも答えは出ない・・・汗・・・そんなんばっかだぁ!!)