6月、みのりは17歳になる。 今日はみのりの誕生日。 ・・・・でも、朝のテレビ番組の星座占いでは・・・・最悪だった。 『今日の双子座の運勢は・・・非常にやっかいなことが起こるでしょう。 贈り物に要注意。』 <げっ!・・・でもまあ、占いなんて信じてないからな> 朝食のおかずの厚焼き玉子を頬張りながら、そんなことを思っていた。 |
みのりの誕生日 |
「みのり。これ、誕生日プレゼント。」 朝、顔を合わせた途端、壮介がリボンのかかった紙袋をくれた。 中の物が何なのか、触れた感触でわかった。 ・・・・いや、もらう前からわかっている。 壮介は、毎年みのりが欲しいと思っている物を、何も言わなくてもくれるのだ。 今年は欲しかったCD。 「ありがとう。」 いつも不思議に思うのだが、やっぱり嬉しいみのり。 ニコニコして受け取る。 「どういたしまして。」 日頃、あまり表情を変えない壮介が軽く微笑む。 みのりは壮介の笑顔を見て、ぼんやりと想う。 <・・・そういえば壮介、昔はもっと笑ってたよな・・・・> 通勤、通学の満員電車に揺られながら、ドアの隅で立っているみのり。 そんなみのりを混雑から庇うように立っている壮介の顔を見上げる。 壮介も6月生まれで、みのりより1週間前に17歳になっている。 プレゼントは、何がいいかと聞いたら、見たい映画があるから 一緒に付き合ってくれ。・・・と言われ、それを贈った。 「一番欲しいものはまだ手に入らないみたいだから。」 映画を見終わり、ラーメン屋で餃子定食を食べている時・・・ 壮介はちょっと寂しそうに笑い、そう呟いた。 子供の頃から一緒にいる幼馴染。 みのりにとって、兄妹のような関係だった。 傍にいて当たり前の存在で・・・・あまりにも近すぎて、自分のことを誰よりもわかってくれている 壮介の気持ちについて、深く考えることもなかった。 学校に辿り着き、いつものように麗奈の熱烈歓迎を受ける。 今日はプレゼント付き。手作りのクッキーを山のように持ってきていた。 「おめでとう!みのり。」 満面の笑みで渡され、みのりも嬉しい気持ちになる。 麗奈は9月生まれ。麗奈よりずっと幼く見えるみのりが、先に誕生日を迎える。 「サンキュー!!」 プレゼントを2つゲットし、上機嫌なみのり。 その上、夜には3人の兄達が、例年通りこれでもかってくらいの プレゼントを用意している。 「今夜は早く帰ってくるからな!期待してろよ、みのり!」 そう言って出かけた兄達。 <今日は良い日じゃんか♪> 占いなんか、やっぱ当たらねぇな・・・・と、思っていた。 3人で校舎に向かって歩いていると・・・妙な人物が目に入る。 前方・・・校庭の真ん中に、巨大な薔薇の花束を抱えて立っている人物がいた。 登校途中の生徒達もみな足を止め、その人物に注目していた。 <何だ?ありゃ・・・> みのりは、他人事のようにその人物をぼんやりと見ていたが・・・。 その薔薇まみれの人物は・・・・みのりを見つけると、ゆっくりと近づいてきた。 そして、みのりの前で足を止め、薔薇の花束をフワリと手渡した。 「・・・・・?!?」 いきなり花束を渡されて、驚きのあまり何も言えず、目をまん丸くして、その人物を見つめる。 「ハッピーバースディ。みのり。僕からのプレゼントはこれだよ。」 そう言ってにこやかに微笑み、自分自身を指差す・・・・・・・野々村輝義。 彼は、たすきのようにして、肩から赤いリボンを自分に結わいていた・・・・。 どうやら「僕がプレゼントだよ♪み・の・り。」・・・と、言いたいようだ。 さすがの壮介と麗奈も、この現実離れした状況に即座に対処出来ず・・・固まっていた。 学校の有名人、野々村輝義。・・・でも、もともとそういった情報に疎く、興味を持たない みのりにとっては「あんた誰?」状態。 とりあえず、 <そんなプレゼント、いらねーよぉぉぉー!> ・・・と、心の中で叫んでいた・・・・。 |
2002.2.11 ⇒
もう誰も私を止められない・・・。(誰も止めないって・・・汗) |