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昼休も終わりに近づいた頃。
教室でみんなが楽しそうに雑談する中、みのりだけが『不機嫌』という言葉を
顔に貼り付けていた。

「麗奈・・・・男振る時、私の名前を出すのはやめろ・・・。」
みのりはゲッソリした顔で、のん気に雑誌を見ている麗奈を睨む。

先ほど、麗奈に振られた男に呼び出され、詰め寄られたのだ。

「水野さん!!頼むから本間さんと別れてくれ!!」
泣きながら懇願された。

<なんじゃそりゃーーーーー!>

みのりは開いた口が塞がらなかった。






みのりと麗奈








本間麗奈はみのりの親友。
麗奈はもてる。・・・・が、言い寄って来る男達を片っ端から振っている。

「私はみのりに全力投球なの。」
・・・振った男全員に言っている台詞だそうだ。この日、その事実を初めて知ったのだ。
呼び出されたことを麗奈に話すと、露骨に嫌な顔をして振った男に対し吐き捨てるようにコメントした。

「みのりを呼び出すなんてなんて奴!最低!みのりも行かなきゃいいのに!!」
憤慨する麗奈に対し、みのりは<そんなことが問題なんじゃないんだよ>と心の中で呟いた。

「振る時の台詞・・・やめろよ。誤解されるじゃないか・・・。」
「あら?本当のことだもの。」
「私と麗奈は友達だろーが!」
「友情に全力投球しちゃいけないの?」
みのりの抗議も、あっけらかんと笑いながら聞き流す麗奈。

<勘弁してくれ・・・>
いつか麗奈のファンに首絞められる・・・と密かに怯え、
みのりはため息を付いた・・・。

いつも、表でも陰でもみのりを見守っている壮介は、当然この日の出来事も知っている。
2人の様子を傍で見ていて、冷ややかな視線を麗奈に向けていた。

<やっぱこの女、要注意だな>
壮介のブラックリストに麗奈の名はとっくに載っていた。



みのりは、初めて麗奈を見た時、何て綺麗な子だろうと思った。
高校の入学式の日。
教室に足を踏み入れた瞬間、窓際の席に座っていた麗奈に目を奪われた。

綺麗なストレートの黒髪。色気のある体つき。意志の強さを感じさせる魅力のある瞳。
声や仕草、何もかもが『女』を感じさせる。


麗奈はみのりが欲しいと思い続けたものを、全て持っているように思えた。

みのりの視線に気が付いた麗奈が、ふっと顔を向け、瞳にみのりを映した。

一瞬目を見開いて、その後花のように微笑み、ゆっくりと席を立った。
・・・そして、何も言えず立ち尽くしていたみのりにそっと近づき、宣言した。

「私、本間麗奈。よろしくね。今日から私達、友達になりましょう。」
・・・みのりはボーとしてて、返事は出来なかった。

麗奈は徹底的にみのりに纏わり付いた。
みのりも特に拒絶せずにいた。
ちょっと自己中心的で我侭だけれど、明るくて積極的な麗奈が結構好きだったからだ。

でも、時々辛い気持ちになる。

<・・・麗奈はいいな・・・>
常に、漠然とそんな想いを持ち続けている。

麗奈といると、どうしても劣等感を感じてしまうのだ。


一方麗奈は、みのりを見た時、運命の出会いを感じた。
麗奈は男を心底嫌っていた。

父親は彼女が小学生の頃女を作り、散々母親を泣かせて家を出て行ってしまった。
離婚し、今は母と子の2人暮らしだ。

そこから男に対してのイメージが悪くなった。

そして、中学2年の時、危うく数人の上級生達に乱暴されそうになり・・・・一気に男嫌いに拍車がかかった。
他にもこまごまとした出来事は山のようにあったが、この2つが麗奈の心に大きく影響した。

<男なんてろくなもんじゃない>
そう思っている。

そして、みのりに出会った。
初めてみのりを見た時・・・・・息が止まるかと思ったのだ。

<こんな可愛い生き物がこの世に存在したなんて・・・>

男の子のような言葉を使い、行動も女の子らしさの欠片もないのに・・・・とにかく何もかもが愛らしい。
可愛い少年のような少女。

一目見て気に入り、付き合っていくうち本気で夢中になった。

女の子らしく振舞ったら、さぞかし可愛いだろうに、それを拒絶・・・というより怖がっている少女。
詳しい理由は何も話してくれないのでわからないが、自分と同じように『男』を
拒絶しているように麗奈には見えた。

自分の可愛らしさに気が付いていない、純真無垢な少女。

・・・麗奈にとってみのりはそんな存在だった。


<こんなに真っ白なみのりを男なんかに渡せない!!>
・・・と、少々危ない情熱に燃える麗奈だった。

2002.2.10 

・・・どんどん変なお話になってゆく・・・。