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『私はみのりが好きなの・・・・。』

突然の告白。
麗奈は真剣そのもので・・・・。






友情と愛情と






みのりは、呆然として麗奈を見ていたが・・・はたと気が付く。

<触れたくて、睡眠薬飲ませたって・・・?>

実際、どんなことをしたかったのかなんて、みのりにはわからなかったが
・・・慌てて自分の身なりをチェックする。
服も乱れた様子もなくちゃんと着ているし、何かされた形跡は一切なかった。

その様子を見ていた麗奈が、クスっと笑う。

「大丈夫よ。何もしてないから・・・。」

それを聞いて、みのりは肩の力を抜いた。
麗奈は寂しげに微笑んだまま・・・涙を落とした。

「・・・出来なかった。みのりの気持ち、知っちゃったし・・・やっぱり、みのりの気持ち無視することなんて
そんな酷いこと・・・出来なかった・・・。」
「麗奈・・・。」
「みのり・・・・私のこと、変な奴だって思ってくれていい。友達やめてくれてもかまわない。
・・・でも、私の気持ちを、一時の気の迷いだとか、そんな言葉で誤魔化さないで・・・。」

麗奈は必死だった。自分自身でも把握できないみのりへの感情。
それを、みのりにだけは否定して欲しくなかった・・・。

「お願いだから・・・私の気持ちに返事をちょうだい・・・。」

俯いて、怯えたように言葉を待つ麗奈。

<返事?!・・・・返事って・・・私は・・・・>
・・・みのりは困惑しながらも必死に考えた。
そして、小さく深呼吸して、口を開いた。

「正直言って・・・・。」
みのりの声に麗奈は体をビクッとさせる。

「正直言って・・・驚いた。だってさ、私、麗奈に憧れてたんだぜ。綺麗だしスタイル良いし・・・
私が欲しいもの全部持ってて・・・。一緒にいて劣等感持っちまうくらい・・・羨ましかった。
その麗奈に好きだなんて言われるとは思ってもいなかったから・・・。」
みのりはぎこちない笑顔を見せた。
「みのり・・・。」
「麗奈の気持ち、伝わった。誤魔化すつもりもないよ・・・。」

みのりは、例え同性でも人を好きになるということを否定することなど考えられなかった。
でも・・・麗奈を恋愛対象として見ることはできなかった。

「・・・私にとって、麗奈は友達だ。それ以外には考えられない。」

麗奈から目を逸らすことなく答えたみのり。
かなり緊張していたらしく、心音が自分で感じ取れていた。

<・・・友達以外には・・・考えられない・・・か・・・・>
麗奈の心は切ない痛みを感じた。
「・・・私が男だったら・・・みのりの恋の相手として、チャンスあったかもしれないのにね・・・。」
・・・声が少し震えていた。

みのりは静かに首を横に振った。
「・・・でも、私は壮介のことが好きだから・・・。」

麗奈はクスっと笑った。
「・・・・私、どっちにしろ、失恋しちゃったわけだね。」

麗奈は微笑を浮かべ、涙の溜まった瞳を細め・・・そのせいで再び涙の粒が零れ落ちる。

みのりにとっても麗奈にとっても辛いやり取りだった。

みのりは、心に痛みを感じながらも・・・・真剣な麗奈の気持ちに対し嘘のない気持ちで答えたかった。
麗奈にとって、みのりの言葉は辛いものだったが・・・・誤魔化さず答えてくれたことに感謝した。

<ちゃんと真正面から答えてくれた・・・・・>
そのことが嬉しかった・・・。


みのりはしばらく黙っていたが、ボソッと
「友達、嫌だって言ってもやめねーからな。」
・・・と、言葉を付け加えた。


麗奈はコクンと頷き・・・手の甲で涙を拭い顔を上げた。
そして、ニコっと笑った。

「・・・次はみのりの番だね。」
「へ?」
「・・・七瀬君のこと。」
「・・・ああ・・・でも、もう遅い。」
「ちっとも遅くなんかないじゃない。まだ結果出てないし、第一みのり、何もしてないじゃない。」
「結果なんてわかりきってるよ。」
投げやりに言い放つみのり。

「みのりが勝手に決め付けているだけじゃない!」
麗奈は真剣な眼差しを向けた。

「気持ちに気が付いても、結局逃げるの?」
「・・・麗奈。」
「みのり、逃げちゃダメよ。」
「でもさ・・・。」

気弱な態度のみのりに、麗奈は屈んで目線を合わせ、ガバっと抱き寄せた。

「うわあ?」
驚いているみのりに顔をぐっと近づけて、低い声で囁く。

「いつまでもウダウダ言ってると、キスするわよ。」
「ひえぇ!」
「・・・逃げないわね?」
にっこりと微笑む麗奈。
その微笑は・・・・迫力があった・・・。

「・・・はい・・・・。」
みのりは恐怖で顔を引きつらせて答えた。

「よろしい。」
満足げに頷き、みのりを解放した。そして、優しげな眼差しを向ける。

「お腹空いたでしょ。」
「あ・・・そういえば・・・・。」
お昼を食べてなかったことに気が付き、空腹を感じた。
「よーし!私がご馳走作ってあげる!」

そう言って、エプロンを身に付け、台所へ向かう。
みのりは、料理に取り掛かった麗奈の後ろ姿を見つめた。

<麗奈、ありがとう。・・・私、頑張るよ>
自信なんかまるっきりなかったけど、頑張ろうと思った・・・・。



その頃壮介は、学校から帰ってきて・・・帰宅する前に、みのりの家の前で立ち止まる。

<・・・みのりと本間、何で授業サボったんだろう・・・>
そのことが気になっていた。

かなり迷った後、門をくぐり呼び鈴を押した。
・・・が、この頃、みのりは麗奈の家にいて、みのりの両親も水野家3兄弟も会社なので当然誰も出なかった。

<留守か・・・・>
寂しさと安堵を同時に感じていた・・・。

以前はみのりの行動はほとんど把握していたのに・・・という寂しさ。
会ってまた拒絶されたら・・・・という恐怖から開放された安堵。
そんな2つの感情を抱えている自分に苦笑いする。

<あれだけ拒絶されているのに、諦められないなんて・・・往生際悪すぎだな>

ため息をついて、自分の家へと足を向けた・・・・。

<・・・前のような関係でいいから戻る方法があったら教えて欲しいよ>
せめて、仲の良い幼馴染としてもう一度みのりの傍にいたい・・・と思っていた。

2002.3.8 

もう私の許容量超えてるかも(またか・・・汗)