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床に倒れ、無防備な寝顔を見せるみのり。

<・・・お母さんの使ってる睡眠薬・・・良く効くのね・・・>
麗奈は、みのりに静かに近づき傍に座って顔を覗きこむ。

「ちょうど絨毯の上に倒れたから・・・痛くなかったよね・・・。」
テーブルの下には、一応小さな絨毯が敷かれているが
・・・倒れた時、頭を打たなかったかどうかを気にしていた。

そっと右手を伸ばし、みのりの髪の毛を愛しげに撫でる。

「みのりの髪・・・サラサラだね・・・。」

そして・・・手をずらし、頬に触れる・・・。

「みのり、こんなに可愛いのに・・・。」

確かに女の子っぽくはないし、色気なんてものもない。
でも、麗奈は初めて見た時からみのりが可愛くてしかたがなかった。





告白





「よいっしょっと。」
みのりを優しく抱き上げて、窓際に置かれたベッドへ寝かせる。

小柄とはいえ、その作業には少々力が必要だった。

ふぅ・・・と力を抜いてベッドに腰を下ろす。
そして、少し思いつめたようにみのりを見つめ、呟いた・・・・。

「みのりは誰にも渡さない。」






<・・・何だか・・・頭がぼんやりする・・・・>
みのりは、暗闇をさ迷うような感覚を振りきり、必死に目を開けた・・・。
ぼやけた視界が少しずつはっきりしてくる。

<・・・あれ?>
薄暗い部屋。・・・夕日が窓から射し込んでいた。

<確か・・・昼間だったはずなのに・・・>
・・・その後、自分がベッドに寝ていることに、やっと気が付いた。

慌てて身を起こし・・・・辺りを見回す。
寝起きで頭が少しクラクラした。

「・・・麗奈・・・?」
部屋の主がいないことに気が付き、戸惑う。

<うわぁ。私寝ちゃったんだ・・・>
一方的に話すだけ話して、爆睡してしまった自分に呆れた。

のろのろとベッドから降りて、麗奈を探しに部屋を出た。
ドアを開けると居間へと続く。

<あ・・・>
ソファーに座っている麗奈の後ろ姿が目に入った。

「麗奈ー。ごめん。私、寝ちゃったんだね・・・。」
頭をかきながら数歩近づき、足を止める。
みのりの声に気が付き、振り向いた麗奈が・・・泣いていたからだ。
声を立てず、静かに頬を涙で濡らしていた・・・。

「みのり・・・。」
「どうしたんだ?何で泣いてんだ?」

驚いて立ち尽くしているみのりを、麗奈は潤んだ瞳で見つめる・・・・。

「・・・私、みのりのミルクティーに・・・睡眠薬入れたの・・・・。」
「・・・・へ?」
言われていることの意味をすぐには理解できず・・・戸惑う。

麗奈は俯き、目を固く瞑った。
「私はみのりが好きなの・・・・。」
「・・・麗奈・・・・?」
「好きなのよ・・・・。」
消えてしまいそうな小さな声。
麗奈は顔を上げて、みのりを見つめ・・・ゆっくりと立ち上がる。

<麗奈は・・・一体何を言っているんだ・・・?>
現状を把握できず、言葉も出ないみのり。
自分に近づいてくる麗奈を、ぼんやりと見つめていた。

「みのり・・・。」

麗奈がみのりの前に立つ。
・・・綺麗な瞳に、戸惑いの表情を浮かべているみのりが映る。

麗奈はゆっくりと手を動かし、みのりの唇に指でそっと触れる。

「眠らせて・・・・みのりに触れたかったの・・・。」
「・・・・触れたかった・・・?」
「みのりの唇・・・体・・・・全てに触れたかった。」
「・・・おい・・・。一体・・・何を言ってるんだよ。」

怪訝な面持ちで麗奈を見上げる。
麗奈は辛そうにみのりから目を逸らし、叫ぶ。

「好きなのよ!友達としてじゃなく、好きなのよ!!」
「ちょっと待てよ!私達、友達だろ?女同士だろ?」
「私はみのりを友達だなんて思ったことない!」

麗奈の言葉に、みのりは体を固くする。

「・・・私のこと、変だと思っているでしょ?私自身だって、どうしていいかわからないもの・・・。」

泣きながら微笑む。
・・・みのりへの気持ちに対し、麗奈は麗奈なりに真剣に考えた。
男を避ける自分自身とみのりとを重ねて、仲間意識を持ち、依存してきただけなのかもしれない・・・
そう思う気持ちも確かにあった。
・・・でも、壮介を想うみのりの気持ちを知り、別の感情が湧いていた・・・。
『恋』を見つけたみのりが、自分を置いていってしまうんじゃないかという焦りと妬み。
それを感じたと同時に・・・みのりを取られたくないという気持ちも強く感じた。
壮介に嫉妬した・・・・。

2002.2.6 

あわわ・・・。(汗)