戻る

「命がけで守れ!」
みのりの兄達から言われた言葉。
幼い壮介は、必死に実行した。もちろんみのりのことが好きだったからでもあったが、
初めはみのりの兄達への憧れからの行動だった。
それが幼馴染の友達という『好き』から『恋』へと変わって行った。
その気持ちを自覚したのは、小学校4年の2月。
「好きな子がいるんだ。・・・・チョコレートあげたいんだけど・・・受け取ってくれるかなぁ・・・。」
頬を真っ赤にして壮介に相談したみのり。

その言葉を聞いて・・・気が付いた。
照れながらも必死で告白しようとしているみのりは、可愛くて・・・
その気持ちの矛先は自分ではないことが切なかった・・・。








壮介の純情@









<・・・何なんだ?この状況・・・・>
みのりは数秒の間呆然とし、頬を両手で束縛し唇を捕らえて離さない壮介に対し、無抵抗でいたが・・・・。
自分のされているのが『キス』だと理解した途端、猛然と反抗しだす。
両手で壮介の体を押し返そうとしたが、力の差は歴然で、あっさりと手首を掴まれた。
そのまま後ろに押され、壁に背中が当たるのを感じた。


「・・・うぅ・・・・。」
必死に声を出そうとし、壮介から逃れようとし、そのどれもが徒労に終わり・・・・
口惜しさと怖さで、涙が零れた・・・。



みのりが泣いてる・・・そのことに気が付いた壮介。
一瞬で我に返り、みのりを開放した。

ようやく自由になったみのりは、背中を壁に預け、俯いていた。
涙がポツンポツンと床に落ちた。


「・・・ごめん。」

壮介は、小さな声で詫びた。
その言葉を聞いたみのり、顔を上げ、力いっぱい壮介の頬を殴りつけた。

壮介は避けようとはせず、モロにみのりの拳を受け入れた。
みのりの力はたかが知れたものだったが、それでも口の中が切れたらしく
血の味がした・・・・。



「・・・何で・・・何だよ今の・・・・。」
手の甲で涙を拭い、みのりは震える声で言った・・・・。
信じられなかった。子供の頃からいつも一緒で、幼稚園の時は一緒にお風呂に入ったことさえある。
いつでも傍にいた壮介はみのりにとって安心できる、自分のことを理解してくれる存在だった。
壮介の傍はとても居心地の良い場所だった。
でも、今目の前にいる幼馴染はまるっきり別人のようで・・・・・怖かった。


「ごめん・・・みのり。」
壮介は、いつもの冷静な壮介らしくない、不安でたまらない縋るような瞳を向けてもう一度詫びた。
みのりはそんな壮介をさらに追い詰めるような言葉を突きつける。

「何でこんなことしたのか理由を聞いてんだよ!!さっさと言えよ!」
「俺は・・・。」

壮介は俯いて・・・・今まで大切にしてきた気持ちを伝えた。

「俺はずっとみのりのことが好きだった。」


みのりは、壮介の言葉を聞いて・・・本日2度目のショックを受けた・・・。
野々村に言われた言葉より、いつも身近な存在だった壮介からの言葉の方が更にみのりを混乱させる。

みのりは自分の気持ちを探そうとはせずに、
壮介の気持ちから逃げ出すことしか考えられなかった。


「・・・何言ってんだよ・・・。ふざけたこと、言うなよ!」
「ふざけてなんかいないよ。俺はお前が・・・。」
「冗談じゃない。バカじゃねーの?壮介と私は兄妹みたいなもんだろ。」
「俺にとってみのりはそんなんじゃない!兄妹でもなければ友達でもない!」
「じゃあ何だって言うんだよ!」
「女だよ!どうしようもなく可愛くて大好きな女だよ!」

壮介は叫んでいた。
そして願うような気持ちで言葉を続けた・・・。

「みのり・・・頼むよ。俺のことをちゃんと男として見てくれよ・・・。」


みのりは、ふぃっと目を逸らし、拒絶した。
「見れるわけ、ないだろ。絶対無理だね。」

みのりにとっては壮介の行動は突然すぎるもので・・・・こんな風に答えてしまった。
これまでのことを考えると今のみのりには、こんな言葉しか言えなかったのも仕方のないことだろう。
でも・・・壮介が必死で伝えた気持ちに、みのりの言葉はあまりに残酷だった。
小さなため息と共に肩の力を抜き・・・今まで抱えてきた気持ちを手放した

「・・・わかった。ごめん・・・変なこと言って。全部忘れてくれ。」
いつもの落ち着いた壮介の声だった。

壮介はみのりとは目を合わせずにその場を後にした・・・・。

一人取り残されたみのり。
玄関のドアが閉まる音がして・・・・ずるずると床に座り込んだ。

自分の言葉が、どれほど壮介のことを傷つけたかなんて、混乱しているみのりには考えられなかった。
後日、とんでもなく後悔することとなる・・・・。

2002.2.21

やっぱラブコメのコメの字取れた・・・・。
ま、私らしいや。でもこれ、リラックスするつもりで
始めた連載なのに、お話結構辛いかも・・・。