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宝の地図(終)

あなたは
嬉しいことがあった時、誰の顔を思い浮べますか?
悲しいことがあった時、誰の顔を思い浮べますか?
どうしようもなく寂しい時・・・誰の顔を思い浮べますか?

あなたは・・・誰と幸せになりたいですか?

例えば・・・街角ですれ違う知らない人・・・・
その人は誰かの・・・・大切な人なんです・・・・・・



実君の手に握られたナイフ・・・・・・鈍い光を放つ・・・。


「実・・・君・・・・?」
実君の顔は真っ青で・・・・大きな瞳は涙ぐんでいた・・・。

「・・・殺してやる!!」
震える小さな声で言った。
俺は今まで恐いほど冷静だった実君の変わりように戸惑ってしまう。


「実君・・・・・だ・・・ダメだよ・・・」
やっとの思いで声を出す。ダメだよ・・・ナイフなんか人に向けちゃダメだよ!!

実君は俺を睨み言った。

どうして?そいつは和之君を殺した!!何もしていない和之君を殺したんだ!!
他にも人を殺してる!!和之君と同じ目にあわせて・・・殺してやる!!」


最後の方は悲鳴のような言葉だった。いや、実君の心の悲鳴なんだ・・・これは。



そうか・・・実君が俺に何も言ってくれなかった理由・・・・・わかった・・・・・・・。
初めから犯人が見つかったら殺すつもりだったんだ・・・・・。
和之君の敵を取るつもりだったんだ・・・・。

俺がもし警察にしゃべってしまったら困るから・・・内緒にしていたんだ・・・。

じゃあ何で俺を付き合わせたんだろうか・・・・。

やっぱり一人じゃ恐かったから?


・・・それとも・・・・・・・・?



実君・・・・?


実君・・・君は心のどこかで・・・・止めて欲しいと願っているの・・・・・・?









俺は・・・男をかばうような形で立ちはだかった。
必死に実君に言う。
「ダメだよ実君!そんなこと・・・ダメだよ!」



実君は搾り出すような声で言った。

「何で?何でダメなの?ちゃんと説明してよ!!そいつは2人も人を殺している。
自分が楽しむために殺している!なのに何でお兄ちゃんは止めるの?
何でそんな奴を守ってやるの?和之君は良い奴だったんだ!本当に良い奴だったんだ!
その和之君を殺したそいつを何でかばうんだよ!!!」


何で?・・・と聞かれて・・・俺は・・・・混乱した・・・。

俺には・・・説明なんか出来ない!!だって俺にもわからないもん!!実君が言っていることの方が
正しい気さえする!!でも・・・でもダメなんだ!!心がそう叫んでる。

「どいてよ・・・お兄ちゃん・・・」

少しずつ実君が近づいてくる。
俺は何も言えず・・立ち尽くす・・・・・。








実君は勢い良く地面を蹴って俺の脇をすり抜け男の胸に向かって走って行った。

その時・・・俺は反射的に実君より一瞬早く
男に覆い被さった。



左腕に痛みが走り、実君のナイフが俺の腕を少し切ったことを知る。

実君は地面に倒れこんだ。


実君、俺の取った行動でとっさにナイフの軌道をずらしてくれたんだ・・・。
でなきゃもっと切れていた。

ナイフを持ったまま荒い呼吸をし地面にうつぶせに倒れてる実君。



俺は上半身だけ体を起こし実君を見つめる。


腕から血が滲む・・・・そんな俺を見て実君は泣きながら言った。


「・・・ど・・・うして・・・?」


実君の視線は俺の腕から流れる血に注がれていた。
ショックを受けたように小さな体は震えている。


わからない。俺にもよくわからないんだ。この男は人を殺した悪い奴だ。
しかも自分の楽しみのために・・・・罪悪感の欠片も感じていない・・・。
俺だってこんな奴実君に殺されても自業自得たと思う・・・。


だけど・・・・。

実君は人を・・・命を傷付ける痛みを知ってる。
だからこんなに震えているんだ・・・・。



これ以上実君を傷付けちゃいけない・・・・・・・・。





俺の頭に・・・・言葉がよぎる・・・・。



『お前の悪の心は取り除いた。』
『だから心が痛いだろ。今まで自分がしてきたことを悔やめ。そして償っていけ!』


和之君が好きだったアニメのヒーローの・・・台詞。
悪い心に取り付かれた人をも救う正義に味方。

こんな言葉じゃ納得できない。

でも・・・。




「・・・お前の悪の心は取り除いた・・・・だから心が痛いだろ・・・・
今まで自分がしてきたことを悔やめ・・・・そして償っていけ・・・・・・・」

口に出して言ってみる・・・・。


その言葉を聞いた実君・・・・・・俺を見て一瞬目を見開き・・・
その後・・・地面にうずくまり大きな声で泣き出した。
まるで今まで我慢していた感情を一気に爆発させるように泣き続けた。

綺麗な実君の瞳から大粒の涙が落ちる・・・。
後から後から零れ落ちる涙・・・・。


俺は実君の小さな手からナイフを取る・・・実君はされるがままナイフを手放した。


「和之君!!和之君・・・・」





実君はその名を何度も何度も呼び続ける。


『実君。ブルーは悪い奴も良い奴にしちゃうヒーローなんだぜ!俺、ブルーみたいなヒーローになるんだ!!』

「僕はそんなヒーローになれなくてもいい!!悪役になったってかまわない!
・・・・君を殺した奴が許せなかったんだ・・・・・・どうしても許せなかったんだ・・・・・・」

実君は・・・まるで和之君と話をするように言葉を言い続ける。


「・・・でも僕がそんなことしたら・・・君はやっぱり・・・悲しむの・・・・?」


寂しげに涙を零しながら微笑む実君。

「・・・ねぇ・・・答えてよ・・・・・・和之君・・・・・・・・・答えてよぉ・・・」






実君の大好きな和之君。
呼びかけてもその言葉は和之君には届かない。
彼はもう二度と答えてくれない・・・。
笑いかけてくれない・・・。
もう会えないんだ・・・。




だって・・・彼は何処にも・・・・いないんだから・・・・。




俺は・・・悲しみと憎悪を抱え苦痛に震える実君に・・・何も言ってあげることが出来ず・・・
・・・・そっと肩に触れてみる・・・・。
実君は一瞬ビクッとし・・・その直後・・俺の胸にしがみついて声を殺して泣き続けた・・・。



俺は・・・実君を抱きしめ・・・ただ側にいてあげることしか出来なかった・・・・・。
















いつか





たくさん勉強していろんな経験をして・・・・大きくなって大人になって・・・・
そうしたら何が正しかったかわかるのだろうか?

その時またこんなことがあったらきちんと答えを出せるんだろうか・・・・・・・・?


・・・・・・きっと・・・無理だ・・・・と俺は思った・・・・・。











俺は
嬉しいことがあった時、悲しいことがあった時、どうしようもなく寂しい時・・
母さんや父さん、友達・・・・俺の大好きな人達を想う。

ずっと・・・みんな幸せでいられたら良いな・・・・・・・心からそう願った・・・・・・。











































「実君たくさん食べてね!!」
川の近くのキャンプ場でお昼ご飯のバーベキューをしている。
俺は実君を家族で行くキャンプに誘ってみた。



『ね!一緒にキャンプに行こうよ!』
実君は小さく頷いた。






母さんは実君を非常に気に入ったらしくさっきから世話を焼いている。
実君は少し照れくさそうにしているけれど・・・・・楽しんでくれているようだ・・・。


ご飯の後で俺と実君は河原で岩に腰を降ろしボーっとした・・・。
川の流れる音・・・・山の景色と緑の匂い・・・。
涼しくて気持ちの良い風が吹く・・・・。

天気もとても良くて・・・・・・・・それだけで嬉しくなる・・・。


俺の横にちょこんと座っていた実君、俺の左腕の傷跡を見つめていた。

それに気がつき実君の顔を見ると・・・少しうつむきながら小さな声で言った。


「ごめんなさい・・・・」

俺は少し焦って言った。
「大丈夫だよ!!全然痛くなかったし、かすり傷だったもん!!」



実君俺をじっと見つめ少し緊張した声で言った。

「稔兄ちゃんは・・・・」
「なぁに?」
「・・・・・・僕の・・・友達になってくれる・・・・・・?」

顔を赤くして実君は不安げに俺の答えを待つ・・・。

そんな実君を見て俺は思わずクスクス笑ってしまった。
実君は少しムッとした顔をして言った。
「何で笑うの?」
俺は何とか笑いを堪えて言った。
「だって・・・そんなに緊張して何を言うのかと思ったら・・・・」
「だって・・・!!」
実君の顔がますます赤くなる。

俺は・・・微笑み言った。


「俺達とっくの昔に友達だろ!!」







その言葉を聞いた実君・・・・大きな瞳で俺を見て
その後・・・・・・・・太陽みたいな笑顔を見せてくれた・・・・・。
2001.5.27

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