宝の地図?
その「空き地」は実君が通っている学校の裏門側、細い道を挟んで真向かいに
小さな「森」のように存在していた。
一歩足を踏み入れると緑が多いせいか涼しく感じた。
「・・・草の匂いがするね・・・」
俺は空気の匂いを鼻で吸い込む。好きなんだ・・・草の匂い。
実君は何も言わずただ地図を見つめ目的の場所に向かっているようだ。
実君の肩越しから地図を覗いて見るとちょうど真ん中あたりに小さな×印が
書いてある。
「ここです・・・・・」
実君は大きな木の下で足を止めた。ランドセルを下ろして木の根元にしゃがみ込む。
小さな手で地面を掘り始めた。俺も慌てて実君の隣にしゃがんで一緒に掘った。
うわぁ・・・爪の間にも土が入っちゃう・・・後で洗うの大変だ・・・。
シャベル持ってくれば良かったなぁ・・・・・・。
俺達は無言でひたすら掘って掘って掘りまくった。
あんな地図じゃおおざっぱ過ぎてどの辺だかわからないもんな・・・。
しばらくして・・・・
「・・・・・・・あ・・・・」
実君が小さく声を出す。
「実君?あったの?」
「はい。見つかりました」
掘っていた穴の中から実君が小さなビニール袋を取り出した。
中には小さな箱が入っている
ビニールに付いた土をはらい中を開けようとしていた実君の手が止まる。
袋の中をじっと見つめ目を細める。
「実君?開けないの?」
実君は袋を見つめたまま言った。
「・・・・誰かが先に開けてる・・・・・・」
へ?・・・何でそんなことわかるのかな・・・・。
俺が首を傾げていると実君が説明してくれた。
「ビニール袋の中に少しだけど・・・・土がはいってる・・・・」
土で汚れてしまっているけれどビニール袋は透明の物だ。
俺は顔を近づけ良く中を見てみると・・・・本当だ・・・ほんの少し・・・土があった。
ビニールの口はしっかり結わかれているので開けない限り中に土は入らないだろう。
実君は袋を手にしたまま立ち上がり周囲を見渡す。
俺もつられて立ち上がる。
木が多くて回りの様子は良く見えない・・・見える建物といえば学校と・・・
4〜5階建てくらいのマンションだけ・・・・。
実君はそのマンションを見つめたまま何も言わない。
その時風が実君のかぶっていた帽子を飛ばした・・・・・。
「実君・・・帽子落ちちゃったよ・・・」
実君の少し後ろに飛ばされ、地面に落ちた帽子を拾って実君に渡そうとして・・・
彼の顔を見た時俺は視線がくぎ付けになってしまった・・・・・。
再び風が吹き・・・実君のサラサラした髪がなびく・・・・。
彼の目は・・・・まるで狙いを定めた鷹のように鋭いものだった・・・・・。
学校の校庭にある水呑場で手を洗い実君はビニール袋を開けた。
手のひらにチョコンと乗るくらいの小さな箱が出てきて
その中には人形が入っていた。
あ・・・この人形・・・見たことある・・・。
確か今小さい子に人気のアニメのヒーローだ・・・・
何ていったっけなぁ・・・・・。
思い出せず俺が頭をかいていると実君が小さな声で言った。
「ブルー・・・・・」
ああ!そうだ!ブルーだ!!『デビルハンター』の『ブルー』だ!!
実君は人形を見つめてつぶやいた。
「和之君『ブルー』のことが大好きだったんです」
「そっか・・・・」
「お兄ちゃん・・・・」
「ん?なに?」
実君はゆっくり顔を俺の方に向け言った。
「しばらく僕に付き合ってもらえませんか?」
え?・・・付き合うって・・・・。
「もうすぐ夏休みですよね・・・・しばらくの間僕とあの空き地へ通って欲しいんです・・・・」
「?何で?・・・通うって・・・・・」
「何も聞かずに・・・・・お願いします!」
実君はペコリと頭を下げた。
・・・・・・俺は実君が何のためにそんなことを頼むのか理解できず首をかしげていた。
でも・・・どうせ暇だし・・・・ま、いっか。
「わかった!いいよ!」
俺の言葉を聞いてやっと頭を上げた実君。少しホッとしたような顔だった。
俺達がマンションに戻ったのはもう夜7時を過ぎていた。
わぁ〜・・・母さんに怒られるな・・・・実君も大丈夫かな・・・・・。
「実君、お母さんに怒られる覚悟しなきゃね」
「僕のウチ共働きで・・・この時間はまだ父も母も帰っていません」
「そうなんだ・・・・・」
俺は実君を玄関まで送っていってそれから自分のウチに帰った。
帰ってから1時間・・・・母さんのお小言を聞かされた・・・・・・・・・。
はぁ〜・・・・・。
2001.5.24
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