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賢一の頭の中で天使と悪魔が囁く。
天使・・・・・こんなに清らかで純真な少女を貴方なんかの毒牙にかけてはいけません! その子のことが好きなんでしょう?大切なんでしょう?なら、おやめなさい!
悪魔・・・・・そんなこと気にすんな♪ここまできたらやるしかないだろ!好きな女の方から
積極的に迫ってきてんだぜ?それを拒絶するなんて馬鹿な男、世界中何処を探したっていないぜ!
・・・わずかながら・・・天使が勝った。
賢一は、硬く目を瞑り、わずかに残された理性を総動員させて、優希の肩に手をかけ体を引き離す。
「賢一様・・・?」
賢一は俯いて、必死に気持ちを落ち着ける。 <あ・・・あっぶねーーーー!!> 今のは危なかった! 危うくこのまま抱き上げて、ベッドになだれ込むところだったー! ・・・・と心の中で叫び、、冷や汗をかいていた・・・・。
賢一の行動に、優希は戸惑い・・・その後、拒絶されたのだと思い、胸に痛みを感じる。
「・・・賢一様・・・・。」 優希の涙声・・・・。
賢一はハッとして、優希を見つめる。・・・優希の瞳から涙が零れる・・・。
<うあー!泣かせちまった・・・・・> 優希の涙に動揺し、まともに頭が働かない。
「・・・賢一様は私がお嫌いなんですね・・・。」 優希の涙声に、賢一は慌てて激しく首を横に振って答える。
「嫌いなんかじゃない!す・・・好きだよ!」 「じゃあ何で?・・・何で私を・・・・・・。」
優希が何を言いたいのかは痛いほど良くわかる。 賢一はため息をついて・・・静かに言葉を口にした。
「やっぱり・・・どう考えたって俺じゃ君につり合わないよ。もっと相応しい相手がいるはずだ・・・。」
優希はその言葉を聞き、一瞬目を見開いて、その後ギュッと手を握り締める。
「・・・私がガキ臭くて女としての魅力がないからダメなんですね!!」 キっと挑むように賢一を見つめ、叫ぶ。
「いや・・・そういうわけじゃなくて。」 「じゃあどういうことなのか教えて下さい!」 「だから・・・。」
優希の迫力に押され、上手く言葉を見つけられない。
「・・・わかりました・・・。もういいです・・・。」 優希は賢一の言葉を聞く前に、何かを決意したように顔を上げる。 そして、愛しい愛しい賢一にビシっと指差し、宣言した。
「見ていて下さい!賢一様が思わず押し倒してしまうようないい女になってみせますから!」 優希はそう言い放ち、部屋から出て行った。
賢一はしばらく、呆然と立ち尽くしていた・・・・・。
賢一の部屋から飛び出し、涙を拭いながら廊下を走り自室に駆け込む。 そんな優希の姿を、廊下で見かけ・・・・八重子は小さなため息を付いた。
<・・・賢一殿は・・・もっと追い詰めなきゃいけないらしいのぅ・・・・> 「世話のかかる2人じゃのぅ。」・・・・そう呟き、クスクスと楽しそうに笑った・・・・。
月曜日・・・。 気まずい雰囲気の中、朝食を済ませ、賢一は会社に、優希は学校へ出かけて行った。
テストも終わり、春休みまでの間、のんびりとした雰囲気が学校内を包む。 優希は授業中、ずっと「どうすれば大人の女になれるのか・・・。」ということを考えていた。
<・・・まず・・・外見からかしらね・・・・> 漠然とそんなことを思いつき、さっそく実行しようと思う。
授業が終わり、優希はいったん家に帰り、その後、私服に着替え再び出かける準備をする。
玄関で靴を履いていると、八重子とジョルジュがやってくる。
「お嬢様。何処かへお出かけですか?」
優希はちょっと焦ったように口ごもりながらも出かける理由を作った。 「お友達と映画を観に行ってきます。帰りは遅くなるけれど、心配しないでね・・・。」 そう言ってそそくさと出かけて行った。
残された八重子。ニヤリと笑う。
「ジョルジュ。ばあやも出かけてくるから、留守番頼むぞ。」
優希は、街を歩きながら、通り過ぎる同年代の少女達の服装を見る。 そして、傍のケーキ屋のガラス窓に映る自分の姿を見つめる・・・・。
<・・・もっと『女』を感じさせる服でなきゃ、賢一様は喜ばないのかしら・・・>
そう思い、視線の先にあった1件のブティックに入る。
その店のウィンドウには露出度の高い、派手な服ばかりが並んでいた・・・。
「おやまあ・・・いきなりこんなの着る気かえ・・・お嬢様は・・・。」 八重子は、優希に気が付かれない様に尾行をしている。 優希が店に入ったのを確認し、店の前で呟く。
<賢一殿。楽しみな展開になっとるぞ> 心の中で囁き、そして、店頭に飾ってあった服を見つめる。
「私ももう50歳ほど若けりゃ似合ったじゃろうに・・・。」
・・・と、呟いた・・・・。
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