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天国と地獄
B

賢一にとって、確かにここは天国。
大好きな優希の傍で生活ができるのだから・・・・。
でも、地獄。だからこそ、地獄なのだ。



日曜の夜・・・・。
「ジョルジュったら・・・・。」
居間で、ジョルジュはお座りしながら、同じくしゃがんでいる優希のお小言をシュンとして聞いていた。

「何だ?ジョルジュ、何か悪戯でもしたのか?」
コーヒー片手に賢一が現れ、ジョルジュの頭を軽くなでた。

優希は、賢一から目を逸らし、頬を赤く染めた。

「どした?お嬢ちゃん?」
賢一はきょとんとした。

何も言おうとしない優希に、賢一は真面目な顔で尋ねた。
「・・・ジョルジュの奴、そんなに酷い悪さしたのか?」


ジョルジュは自分のことを言われているとちゃんと理解しており、ますます俯き
身を縮める・・・・。


「・・・・ジョルジュったら・・・お散歩中・・・ララちゃんにあんなこと・・・・。」
「ララちゃん・・・ああ、あのメスのゴールデンレトリーバー。」
賢一も、結構ジョルジュの散歩に行くので、犬友達には詳しいのだ。
ララはジョルジュととても仲が良く、会う度にお互い嬉しそうにじゃれあっている。
そんなことを思い出しながら、優希を見る。

「で、あんなことって?」

優希は慌てて立ち上がり、賢一に背を向け、小さな声で言った。

「・・・ララちゃんに赤ちゃんができたら全部引き取らなきゃ・・・。」
それだけ言って、パタパタと走り居間から出て行った・・・・。

残された賢一とジョルジュ・・・・。

<なるほどね・・・・>

賢一は苦笑いしてジョルジュの顔を見る。
ジョルジュは恐る恐るって感じで賢一に目を向け・・・やっぱりシュンとする・・・。


<あれだけ仲が良い2匹だったからな・・・・>

「合意・・・だったんだよな・・・?」

その言葉に反応し<もう怒ってないの?>と、縋るような瞳で
賢一を見つめるジョルジュ・・・。

「・・・男だって何かと辛いんだよな・・・。」
しゃがんで、ジョルジュの肩(?)に腕を回し、ボソッと呟き・・・・・ハッとする・・・。

<俺は犬相手に何言ってんだ!>
軽く眩暈を覚えながら立ち上がり、よろよろと居間から出て行った・・・・。

ジョルジュは、そんな賢一を不思議そうに首を傾げて見つめていた・・・・・。




優希は、ベッドに座り小さなため息をついた。

<・・・・賢一様はどうして私に何もしてくれないのかしら・・・>

好きだって言ってくれたのに、何でなのかなぁ・・・と、俯き、泣きたくなる。

<私に魅力がないのかな・・・・>

やっぱりガキ臭い私なんかじゃダメなのかな。
やっぱりもっと大人の女性じゃなきゃダメなのかな・・・。
そんな言葉がグルグル回り・・・切ない気持ちが募る・・・・。

そして・・・・・・思いを決めて立ち上がる。





賢一は自室でひとしきり落ち込んだ後・・・気を取り直す。

「・・・風呂にでも入って寝よう・・・・。」
賢一や優希、八重子の部屋には専用の浴室がある。
浴槽にお湯を溜め終わり、上着を脱ぎ、上半身裸になった・・・・ちょうどその時・・・。

部屋のドアが開く気配がして、その直後、賢一を呼ぶ声がする。

「賢一様!」

<お嬢ちゃん?!>
その声は紛れもなく優希の声。しかも、何だかすごい気迫を感じ、賢一は脱衣所で固まる。

「賢一様・・・。」
部屋の中を探し回る気配がして、賢一はハッとして脱衣所の鍵を閉めようとする。
・・・・が、もう少しでノブに手が届くという所で、優希に開けられてしまう。

「賢一様!」
思いつめた顔の優希が脱衣所に踏み込んでくる。

「お・・・お嬢ちゃん・・・?」
たじろぐ賢一にかまわず、優希は迫ってくる。

「賢一様!教えて下さい。何で私じゃダメなんですか?」
「好きだって言って下さったじゃないですか!」
「どうすれば私の方へ振り向いてくれるんですか?」
畳み掛けるように連発される優希の言葉。
賢一は、狭い脱衣所の端まで追い詰められて逃げ場がない。

「賢一様!」
「とにかく落ち着いて!!」
賢一は優希の肩を掴み落ち着かせようとするが・・・・目の前に、自分を見つめる
優希の綺麗な瞳があり・・・。


<だ・・・ダメだ・・・。>

もう限界・・・その言葉が脳裏を過ぎり・・・気が付いたら優希を抱き締め唇を重ねていた。

優希は突然感じる賢一の体温に身を固め・・・その後、涙ぐみながら目を閉じ、そっと背中に手を回す。

賢一の素肌に直接触れて・・・優希は幸せと緊張の入り混じった気持ちになっていた・・・・。

2001.1.13 

・・・さて・・・(汗)