らすとばとるF
それからしばらくの間は、騒ぎのようなものは何も起こらず時間が過ぎた。 7月も中頃に差し掛かり、全社員に向けた社内公募がされた。発信元は企画部。 新商品のアイデアを社員に募る記事が、社内報、社内用ホームページ、そして業務連絡書として回覧、発表された。 社員なら誰でも参加できるし、採用された場合、金一封が出る。 仮に上手く商品化され、ベストセラーやロングセラー商品になれば昇進にも影響するだろうな…などと考えながら公募の回覧を見ていると、企画部長が楠木先輩を呼ぶ声がした。 「楠木君。ちょっと来てくれないか。」 「あ、はい。」 楠木先輩はパソコンのキーボードを打つ手を止め、企画部長の席へと急ぐ。 その様子に以前のような緊迫感はなく、部下を呼ぶ上司と言った、ごく日常的な風景だったが…。 「何でしょうか?」 楠木先輩が尋ねると、企画部長はクルリと椅子を回し、横を向いてしまう。 そっぽを向いたまま、社内報を楠木先輩に乱暴に渡す。 距離があって良くは見えないけど、社内報の何処かのページが開かれている。 楠木先輩はキョトンとし、社内報と企画部長とを交互に見つめる。 「その公募、君も企画書提出する気だろ?」 どうやら手渡された社内報は、社内公募が載っているページが開かれていたようだ。 「はい…応募してみようと思っていますが…。」 楠木先輩は戸惑いながら答える。 「その企画が良いもんだったら、次からは補佐でなく、プロジェクトチームに正式に参加させてやる。企画書、出来上がったら見せてみろ。」 企画部長は言うだけ言って、机の上にあった書類の束を手に取り、それに目を走らせる。 いかにもついでって感じを装っているけれど…大根役者だなぁ。 言われた楠木先輩、しばらくポカンと呆けた顔をして企画部長を見つめていたが、意味を理解したらしく、満面の笑顔になる。 「はい!!頑張ります!!」 社内報をギュッと胸に抱いてペコッと頭を下げる。 …正直言って驚いた。あの企画部長がチャンスを与えたんだ。 しかも、一見、部長ってば、まだ女性を差別している可愛くない言い方をしているけど、どう転んでも楠木先輩をチームに参加させるつもりだろう。 だって、応募した企画が採用されたらって言わずに、『良いもんだったら』って言った。 楠木先輩ならかなり良い出来の企画書を提出するだろうからね。 これが企画部長なりの精一杯の受け入れ方なんだろう。 「私も応募してみようと思ってんだ。その企画。」 ビックリ!!突然耳元で香苗の声がする。 香苗がいつの間にか俺の席の隣に立っていて、身を屈めて俺が見ていた回覧を覗き込んでいた。 「楠木先輩にも負けないぞっと♪」 不敵な笑みを浮かべ、言いたいことだけ言って自分の席に戻って行こうとする。 聞きたいことがあって呼び止めた。 「宮内先輩。」 「ん?何?」 「その後、どうですか?」 俺は、2つの意味を込めて言った。 一つは園田課長のこと。 もう一つは…噂。 香苗は言葉の意味を読み取ったらしく、呆れたように答える。 「まだ気にしてんの?何もないわよ。」 この答えは園田課長に関してのことだな。俺が未だに園田課長を警戒しているから、少々呆れているらしい。 「ま、噂の方はボロボロだけど、身から出た錆って奴だから、何言われたって文句は言えない。」 「…大丈夫なのか?」 小声で聞く。 「実質的な被害は何もないわ。第一この私に面と向って文句言える女がいると思ってんの?」 香苗はニヤリと笑って自分の席に着いた。 以前の香苗は見事なまでの猫かぶりで男性社員からは絶対的な人気があった。 その姿は女性から見ると可愛い子ぶってると見えたのだろう。多数の女子社員にあまり良く思われてなかった節がある。 自然体に戻った香苗のことを、あることないこと噂している。 それこそ、ここぞとばかりって感じだ。 香苗と園田課長が別れたって話はあっという間に社内に広まっていたが、その内容は事実とはかなりズレがあった。 実際は香苗が園田課長のプロポーズを断ったのだが、噂では香苗の猫かぶりがバレてプロポーズを撤回されたとか、玉の輿狙いだと言うことが園田課長に知られたので捨てられたとか…噂のどれもが香苗が振られたってことになっている。 しかも香苗がかなりの悪者になっている噂ばかり。 香苗の耳にも噂は聞こえてくるらしいが、逆に安心したようだ。 「私の所為で園田さんを振り回しちゃったんだから、今回のことで少しでも彼に非があるような噂が流れたら申し訳が立たないもの。」…と、香苗は噂に関してコメントした。 俺としては心配だけど…考えてみれば香苗の言うとおり、今の香苗に喧嘩を売るような勇ましい女はいないだろう。 園田課長のことも、俺が過敏過ぎたのかな。 あの後何も仕掛けてこないし。 「さあ、バリバリ仕事するわよー!」 香苗は最近仕事に闘志を燃やしている。 営業課長や坂田部長に、担当を持たせてくれと訴えてもいるらしい。 先輩にくっついて客先回りも始めている。 颯爽としている香苗の姿は実に生き生きとしてて、やっぱ見惚れちゃうな。 午後、俺は得意先に呼ばれていたので外出した。 玄関ホールで夏目を見かけた。 外出から帰ってきたようだけど…様子が変。 夏目は急くように早足で歩き、その後ろから中年の女性が付いて来ていた。 夏目の表情は今にも泣きそうで、対する女性は誰の目から見てもわかるくらい不機嫌。 どうしたんだろう? 数メートルの距離があるところで俺と夏目たちはすれ違ったんだが、夏目は俺にまったく気がつかず、代わりに女性の方が俺の顔を見た瞬間、反応した。 目を見開いて立ち止まる女性。 俺は気になって、何度か振り返りつつ社を後にした。 …何だったんだろう、女性のあの反応。 それまで怒りしか感じられなかった表情が一瞬にして驚きに変わっていた。 気にはなったが、駅に向うにつれ俺の思考は仕事へと集中して行く。 数時間後社に戻ると、俺宛に内線電話がかかってきた。 相手は園田課長だった。 至急総務部の第二会議室に来てくれと言われた。 …何だってんだ? とにかく言われたとおり総務部に向った。 総務部はいつもなら終業間近の穏やかな雰囲気が漂っているはずなのに、今日は何だか重々しい空気に包まれている。 園田課長の姿は当然のようになかったが、何故だか夏目の姿も見当たらない…。 俺は首を傾げながら第二会議室に辿り着く。 コンコンと軽くノックして反応を待つ。 すると、遠慮がちに扉が開き、蒼白な顔した夏目が迎え入れてくれた。 素早く会議室に入ると、夏目が俯いたまま詫びてきた。 「ごめんね。椎名君…。」 「ごめんねって…どうしたんだ?」 「夏目君が大変な失敗をしてしまってね。」 園田課長のため息混じりの声がした。 会議室の一番奥の席で足を組んで座っていた。 「一体どうしたんですか?」 俺は立ったままで園田課長の説明を待つ。 園田課長は重苦しい声音で、話を切り出す。 「イチダ屋の市田社長を知っているか?」 「あ、はい。」 『イチダ屋』は全国各地に店舗を持つスーパーマーケットだ。 うちの会社の得意先。 この得意先は異例で、営業部ではなく総務部の園田課長が担当しているんだ。 何故そういうことになったのかは知らないけど、市田社長は園田課長が担当じゃないと取引しないそうだ。 市田社長は確か40代後半の女性…。独身貴族を満喫しているって話だ。 俺は見たことはないんだけど、『凄い迫力のある人』と先輩たちが言っていた。 市田社長は一筋縄ではいかない性格って話なんだけど…詳しくは知らない。 「市田社長は今日が誕生日なんだ。毎年社長の誕生日には総務部から贈り物をしていてね。今回は夏目君に選んでもらったものを届けさせたんだ。いつもなら私が行くのだけれど、生憎今日は重要な会議があってね。夏目君に行ってもらったんだが…品を差し出した瞬間社長が激怒してしまってね。」 「何を贈ったんですか…?」 この返事は、隣で立ち尽くしていた夏目がしてくれた。 「花束と…三ツ星百貨店で選んだ和食器です…。」 「何でそれで怒るんですか?別に変な物じゃないですよね?」 もらって怒るような品物じゃないだろう。 園田課長は小さく頷き苦笑いする。 「君の言うとおりだ。さっき夏目君の失敗と言ったが、実は少々運が悪かっただけなんだ。何せ中を開ける前に怒ったわけだしね。怒りの原因は品物の所為じゃない。」 「じゃあ、何で社長は怒ったんです?」 「今回わかったことなんだが、市田社長は三ツ星百貨店が死ぬほど嫌いなんだそうだ。」 園田課長は疲れたように右手で軽くこめかみを押さえる。 「理由はわからないが、三ツ星百貨店に個人的な恨みがあるらしい。三ツ星百貨店の包装紙を見るだけで虫唾が走ると言っていた。」 「そんなの…知るわけないじゃないですか!」 「きちんと情報収集をしなかったこちらも迂闊だった。市田社長は大層ご立腹で、夏目君を引っ立てるようにして怒鳴り込んできたんだ。」 「え…?市田社長、来てるんですか?」 「ああ。今もこの階の応接室で待ってもらっている。」 …なるほど。総務部の様子がおかしかった訳がようやくわかった。 怒鳴り込まれちゃ、そりゃ空気も凍るわな。 それにしても…市田社長ってどんな人物なんだ? 先ほどから俺の脳裏を過ぎっている、玄関ホールでの出来事。 あの時、泣きそうだった夏目の後を、不機嫌な顔して付いて来ていた女性。 もしかして、あの女性が市田社長? 俺が推測していると、夏目が半泣き状態で口を開く。 「すみません…。こんな事態になる前に私が何とかしなきゃいけなかったのに…。」 「いや、これは君じゃなくても、例えば私だったとしても怒りは買っていたわけだから。市田社長のことを把握していなかった私のミスだ。すまなかったね。」 園田課長は夏目を宥めるように言う。そして、俺に視線を戻し苦笑いする。 「夏目君は贈り物を用意したのは自分だと市田社長に訴えて、一人で責任を取ろうとしてしまったらしい。結果、彼女だけに市田社長の怒りの矛先が向いてしまってね。」 責任感の強い夏目らしいな…。 夏目は力なく肩を落とし、俯いている。 何とかしてあげたいと思うけれど…俺なんかに何が出来る? ここで俺ははたと気が付いた。 「課長…俺はいったい何で呼ばれたんですか?」 俺みたいな新人のヒヨっ子がどうにかできるもんでもないよな…。 園田課長は小さく息を吐き、俺を見る。 「この事態を収拾できるのは椎名君、君しかいないんだ。」 「…はい???」 な、何で俺しかいないんだ? 「実はね。市田社長が言うには、今日玄関ホールで偶然君を見かけたそうだ。」 やっぱり、あの女性が市田社長だったんだ…。 園田課長がワンテンポ間を置いた後、俺を呼んだ理由を明かす。 「市田社長は君の事をいたく気に入ったらしくてね。」 市田社長は散々苦情を言った後、突然俺の外見の特徴を言いだして、誰だったかを調べさせたらしい。 「私に代って君を『イチダ屋』の営業担当にしてくれたら、今回のことを不問に付しても構わないと言ってくれている。もし断れば、社長に直談判して夏目君を辞めさせるように言うそうだ。もちろん父もこんな理不尽なことで社員を放り出すことはしないだろうが、そうなると我が社は大事な得意先を失うことになる。今この件は私で止めてあるんだが、まずは君の意思を聞こうと思ってね。」 「私が担当者になれば済むことなんですよね?」 「そうだ。そうすれば、この件は騒ぎにならずに済む。君が了承してくれれば私と…あとは営業部長には話をしなければならないが、私たちの胸だけに収めることが出来て夏目君も負い目を感じずに済む。ただ単に営業担当が代わるだけって話で終わらすことが出来るからな。どうだ?…引き受けてくれるか?」 「もちろんです。」 俺は即答した。 園田課長は爽やかな笑みを浮かべる。 「ありがとう。君ならそう言ってくれると思っていたよ。」 なんだ、簡単な話じゃないか。 市田社長、クセが強そうだけど…営業マンとして誠心誠意対応すれば何とかなるだろう。 しかし…謎が残る。 俺はその疑問を口にしてみた。 「園田課長…。市田社長は何で私に拘るんですかね…。」 「以前に社長と面識は?」 「ありません。」 初対面の、しかも駆け出しの俺に、何故そこまで拘って仕事を任せたがるのかがわからない。 「ふぅん。」 園田課長は心もち小首を傾げるが、さして気に留めてるわけではなさそうだ。 …園田課長に聞いてもわからないとは思うけど…疑問には思わないのかな…。 園田課長は俺の質問には答えずに、夏目に顔を向け優しげな言葉をかける。 「夏目君もご苦労だったね。もう帰って良いよ。君が悪いわけじゃないんだから気に病む必要はないからね。ただ、今回のことは教訓にしようね。」 今まで不安げで泣きそうだった夏目の顔が、今度は安堵で涙目になっている。 「すみません。ありがとうございます。椎名君もありがとう。」 深々と何度も頭を下げ退室して行った。 会議室には俺と園田課長だけになったわけだが…。 園田課長の夏目への対応は終始彼女を気遣っていて、優しいものだった。 俺、やっぱり園田課長のこと誤解してたのかな。 あの時見せた課長の歪んだ一面だって、ちょっと腹が立っていただけなのかもしれない。 好きな女にちょっかいだされれば誰だって不快に思うもんな…。 …などと俺がちょっとばかし自分の『人を見る目』のなさを反省していたら、園田課長が静かに立ち上がり、ゆったりとした足取りで歩いてきて、すれ違う直前で立ち止まり、俺の横に立つ。 「私はこれから営業部に行って、坂田部長に話をしてくるから、君は応接室に行って市田社長の相手をしていてくれ。」 俺のことは見ずに前を向いたまま指示を出す。 「はい。」 俺の返事を聞くと、園田課長は心もち俺の方へ顔を向けた。 ふいに、今まで優しげだった園田課長の笑顔が冷たいものに変わる。 「…正直言って、今回の騒動は私にとって願ってもないことだったよ。」 「え?」 願ってもないって…何でこんな騒動が願ってもないことなんだよ。 耳を疑ってしまう。 園田課長は俺の様子を見て楽しそうに笑う。 「先ほど、何故市田社長が君に拘るのかと言っていたが、良いことを教えてあげよう。 市田社長は何を隠そう無類の男好きなんだ。」 なぬ? 俺、一瞬考えてから、言われたことを理解した。 「…あの…それって…。」 「私の時もそうだったよ。初めは営業部の人間が担当してたんだが、ある日来社してきた市田社長が社内で私を見かけて名指しで指名してきた。私が担当でないと取引しないと言い出してね。上得意先なので嫌とも言えず、私が専属になったってわけだ。」 …何だって? 「市田社長はうちの社も含め、関係会社に頻繁に足を運ぶ。表向きは信頼関係作りと言ってるが、好みの男を物色するためだともっぱらの噂だ。まさか君のような男を気に入るとは思わなかったが、これでやっと私もあの女から解放されると思うとホッとする。何せ、仕事と称して随分と振り回されたからね。君に引き継げると助かるよ。それに…これでささやかではあるけれど君に報復ができる。」 「報復って…。」 園田課長は笑顔を消し去り、俺を憎々しげに睨みつける。 「香苗は君の所為で変わってしまった。許せるはずないだろう?」 まさか…これって俺を貶めるための罠か? 全部園田課長が仕組んだことなのか? と、園田課長、俺の考えていることを察したようで苦笑いする。 「言っておくが、私は何もしていないよ。少なくとも今回はね。いくら私だって君相手に会社の損失になるようなことはしないさ。」 言い終わると、実にさっぱりした爽快感漂う微笑みを顔面に貼り付け、俺の肩にポンッと手を置く。 「まあ、頑張ってくれよ。市田社長は押しが強いからな。私も逃げるのに苦労したんだ。今回は弱みもあることだし、それ相応の『サービス』が必要だろう。せいぜい失礼のないように貞操を守ってくれ。彼女は手強いぞ。何人もの男が餌食になってるって話だ。」 て、貞操って…?! 餌食って〜!!市田社長は怪獣かい? やっぱ、俺の目は狂ってなんかいなかった!! こいつは陰険でしつこい奴だ〜!! 「俺、この仕事…。」 「降りるかい?私は構わないけれど、その場合夏目君がどうなるかわからないよ。『イチダ屋』がもたらしてくれる利益はとても大きい。この不況の中、会社自体が生き残るために泣く泣く社員を切ることだってあるだろう。」 ちくしょう!さっき夏目がいた時言ったことと180度違うじゃねーか!! 「そんな勝手なことが許されわけないでしょう!第一イチダ屋の営業担当者であり、夏目さんの上司であるあなたにも責任があるはずだ!」 「生憎と、市田社長の怒りを買っているのは夏目君だけなんだ。まあ、私も責任を取れと言われれば取るけどね。夏目君の方が痛手は大きいだろう。」 …この根暗野郎…。 口惜しくて拳を握り締める。 そうだよな…会社が社長の息子に傷を付けるわけがない。 多分夏目一人に責任を押し付けるのが関の山だ。 でも、それにしたって…。 「こんなめちゃくちゃな理由でクビになんか出来ないでしょう?」 「正当な理由をそろえればいいんだろう?」 園田課長は嫌味なくらい強気だ。 …この男、何をやるかわからないって怖さがある…。 『正当な理由』ってやつを作り上げるくらいやってのけるだろう。 「夏目君は君の仲の良い同期だろう。助けてやったらどうだ?逆にチャンスかもしれないぞ。市田社長に気に入られれば君の出世に大いに役立つだろうからな。まあ、多少の肉体労働はしなきゃならないだろうけどね。」 何なんだ!その『肉体労働』ってのは!! 園田課長はその先は言葉にしなかったけれど、きっと俺が市田社長にいい様にされるもよし、怒らせて仕事を切られてクビにする題材を手に入れられるもよし…どっちに転んでも万々歳と思っているに違いない。 どちらかと言えば後者を期待してんだろうケド、どのみち俺、ピーンチ!! …落ち着け洋介!こんな挑発に耳を傾けるな! 市田社長だって人間だ。仕事上の相手にいくらなんでも無体なことはしないだろう。 きっと園田課長が過剰な期待をしているだけだ! 何も俺を取って食おうってわけじゃないだろうし、話せばわかってくれる! ようは俺の営業マンとしての実力次第ってことだよな。 これはただの会社対会社のビジネスだ。ちゃんとした対応で市田社長の心を掴めば良いだけの話さ! そうだよ!チャンスに転ずることだって出来るかもしれない。 園田課長の鼻をあかすためにも危機を好機に変えるんだ。 俺は心の中で深呼吸し、口を開く。 「そうですね。確かにチャンスかもしれません。私に一切合財任せといて下さい。」 出来る限りの余裕を見せ、笑顔を作る。 園田課長への宣戦布告だ。 あんたの思惑通りになんかならないってことを証明してやる。 園田課長は笑顔のまま、ゾッとするほど憎しみのこもった眼差しを俺にぶつける。 「市田社長がお待ちだ。早く行きたまえ。」 「わかりました。」 俺は園田課長を残し、会議室を後にする。 そして、フロアから出て、廊下の一番奥にある応接室へと向う。 |
2003.1.30 ⇒
私らしい展開だな・・・ははは。 |