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幼馴染D

「カー助のこと好きなんだもん。」

レイミの告白。

「おい・・・お前何おかしなこと言ってるんだ・・・?」
突然告白されたカー助、困惑しまくっていた。
今までよく『愛してる』だの『貴方だけよ』だのと迫られたりしたが
冗談だと思っていた。まさか本気で好かれていたとは思いもしなかった。
<それに俺たちオス同士だろうが・・・・(汗)>


戸惑うカー助を優しげに見つめるレイミ。
「本気よ・・・私。」
「・・・・・・。」
驚きのあまり言葉が出てこないカー助。
そのカー助と同じくらい驚いている人物がいた・・・・・。

「レイミ・・・・何で言ってくれなかったの?」
キリーが辛そうに・・・少し責めるような口調で言った。

「言ったらやめてくれたの?」
「・・・・・・。」
キリーは何て答えて良いのかわからず言葉に詰まる。
親友のレイミが恋している相手の魔法玉を抜こうとしていたのだ・・・。
その事実を前にして何も言えなくなる。


そんなキリーに優しく言葉をかける。
「私のこと関係無しに・・・こんなことするのをやめて欲しかったの・・・。」
「レイミ。」
「キリー・・・。心を奪って無理やり手に入れても・・・・悲しいだけよ・・・。」
「でも・・・。」
「キリーだってわかってるんだよね・・・。」

『心を操る魔法』
絶対に使ってはならないという誓いを立て、ようやく伝授される魔法。
この魔法を使った者への罰は・・・・・・・・・・・。
思い知らされるのだ。
魔法を使って手に入れた心なんて悲しさしか残さないことを。
もう2度と大切なものは戻らない・・・取り返しのつかないことをしてしまった罪。
誰が手を下すことなく、自らを裁くことになる。
そのことがわかっているから、この魔法を習得した数少ない魔法使い達は
決して使わない。魔法の技術を高めるためだけに習得するのだ。



「キリー・・・私は好きな人には幸せになってもらいたい。そう思う。」
「レイミ・・・。」
「たとえ隣にいるのが自分じゃなくてもね・・・。」
「そんなの・・・そんなの綺麗事よ!誰だって好きな人には自分の側にいて欲しいって
思うわ!どんなことしたって・・・。でないと悲しくて辛くて・・・・。」
「うん。辛いね・・・。でもそれ以上に好きな人の笑顔が見れなくなることの方が、もっと辛い。
そう思わない・・・?」



キリーは言葉をなくし・・・代わりに瞳からぽろぽろと涙が落ちる。


「キリー・・・。私知ってるよ。何でキリーが他の人より魔法を覚えるのが早かったのか・・・。」


もちろん才能があったことも事実。
他の者から見れば、どんな高等な魔法も容易く使いこなせているように映るだろう。

でもキリーだって初めからそうだったわけじゃない・・・。







遠い昔、まだキリーと健太郎が小さな子供だった頃、その頃からキリーは
幼い子供とは思えない程の魔法を使いこなしていた。
ある日、森へ遊びに出かけたキリーと健太郎。
2人の肩には、まだまだチビっちゃいカー助とレイミが乗っていた。
目的の花畑へ向かう途中、落石があったらしく大きな岩が道を塞いでいた。
それを見て健太郎は引き返そうと言ったのだが、キリーはまだ覚えたばかりの魔法を
披露すると言い出した。
『お運び君』という、大きな恐竜のようなものを出す魔法だったのだが・・・・。
失敗したのだ。『お運び君』はキリーの言うことをきかず暴れまわった。
もちろん魔法を失敗した時の対処法もあるのだが、優等生で失敗などしたことが
なかったキリーは動転し何も出来なかった。
その時、日頃から失敗なれしていた健太郎が魔法を解いてくれた。
・・・でもそのせいで健太郎は酷い怪我をした・・・・・。
キリーは治癒の魔法も使えたが、まだ力不足で・・・怪我を直しきれず痛みで苦しむ健太郎を前に
怖くて怖くて泣くことしか出来なくなっていた・・・。

『大丈夫だよ。泣かないで。』
健太郎は微笑んだ。

カー助とレイミが助けを呼んでくるまで、ずっと怯えるキリーを
健太郎は励まし続けた。

かなり酷い怪我で辛かったはずなのに、それでも笑い続けた。

『立場が逆じゃない・・・。』
大きくなったキリーは、そのことを思い出すたび苦笑いする。


このことがあってから、キリーはそれまで以上に魔法の修業に励んだ。
誰よりも努力して、どんどん強力な魔法を使えるようになっていった。
こんなに若くしてここまで立派な魔法の使い手になれたのは、決して才能だけじゃない。

キリーの想い。

守りたい。

好きな人に傷ついて欲しくない。

大好きな人を守りたかった・・・・・・。




『信じてる。』

健太郎の言葉。

健太郎は、キリーはとても優しい心を持ってることを知ってる。





健太郎が人間界で暮らすことを選んだと知った時
<モクモクの心が汚れちゃう>
そう思った。

人間達なんかと暮らしたら、健太郎が変わってしまうと思った。

でも・・・気がついたら自分の方が変わっていた・・・。

自分勝手に、大好きな人を傷つけようとしている・・・。


なのに・・・・


『久しぶりだね、キリー。』
そう言って笑う健太郎の笑顔は、昔のままだった。




キリーの手から魔法棒が落ちる・・・。


すると・・・健太郎を包んでいた魔法の光が力を失い・・・・・・やがて消滅した。



















<身体が軽くなった・・・・>
健太郎はかすかに残った意識で、ぼんやりと考えていた。
先ほどまで感じていた強烈な睡魔と身体の重さが徐々になくなっていった。
意識もどんどんはっきりとしてくる・・・。

「健太郎!」

カー助の声。
その声に導かれるようにゆっくりと目を開ける・・・・。

健太郎の目に映ったのは、心配そうな顔で自分を覗き込むカー助とレイミ、
そして・・・・・顔をくしゃくしゃにして泣いているキリー。



「キリー・・・。」
「・・・ごめんなさい・・・・モクモク・・・ごめんな・・・さい。」
声を震わせ詫びるキリー。大きくて綺麗な瞳からは涙の雫がいくつもいくつも落ちる。

そこにいるのは昔と変わらない幼馴染。

勝気で頼りになって、でも本当は寂しがり屋で・・・・優しいキリー。




「大丈夫だよ。泣かないで・・・。」
健太郎は微笑んだ。
子供の頃と同じ笑顔だった・・・・。

2001.10.9 

カー助とレイミ・・・マジ・・・何かやりたいな。へへ(←大馬鹿野郎)