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幼馴染@

夕食は、咲子が予約していたステーキハウスに食べに行った。
店内は広くてステーキの美味しそうな匂いが漂っている。
お客は家族連れも多く、ゆったりと食事できそうだった。

「おにいちゃん。またいっしょにゆうえんちいこうね!」
健太郎の隣にちょこんと座っている優子が、オレンジジュースを飲みながら微笑んだ。

「田中、もててるな。」
健太郎の真向かいに座ってる関口が笑いながら言った。

健太郎はその言葉に苦笑いした。

遊園地を堪能した健太郎、優子と満足げに『たのしかったねぇ〜。』・・・と幸せのため息をついた。
・・・で、遊園地を後にする時初めて気がついた。
健太郎が優子と遊びまわっている間に、関口と咲子はずっと2人きりだったわけで・・・。
その間ずいぶんと色んな話をしたようで、2人の雰囲気は以前より親しいものになっていた。

<・・・俺ってバカかも・・・>
うなだれる健太郎。
きっと帰ったらカー助に『健太郎らしい間抜けぶりだな。』と言われるんだろうなと思った。

「おにいちゃん。どうしたの?」
そんな健太郎を心配する優子。健太郎はクスッと笑う。
<ま、いっか。優子ちゃんと遊べて楽しかったもんな>



ステーキはとても美味しくて、家で留守番しているカー助に申し訳なく思い
<一人で美味しい物食べてごめんね>と心の中で詫びる。

でも、カー助は留守番なんかしておらず、健太郎について来ている。
ステーキハウスの屋根の上でじっと辺りの気配を探っている。

レイミの言葉を聞き警戒しているのだ。
<一体何をする気なんだ?>
健太郎に何かしたら絶対許さないからな!
そう思いながら、たぶん近くにいるキリーの気配を探す。

カー助は健太郎が狙われていると思っていたが、まさか自分自身もターゲットになっているとは
思っていなかった。






デザートを食べ終わり、紅茶を飲んでいる時咲子と優子が席を外した。
優子がお手洗いに行きたがったのだ。


2人きりになり、関口が健太郎を見て微笑んだ。
健太郎はきょとんとした。
「何ですか?」
「いや、面白い奴だなと思って。」
「?」

「金曜日に言ったこと・・・本気だからな。」
関口の言葉の意味、健太郎にはわかっている。
「・・・・・林先輩のこと本気で好きなんですね。」
「ああ。田中も好きなんだろ?態度見てりゃわかる。」
金曜の夜、関口にライバル宣言され、動転していたが後から考えると
<何で誰にも林先輩を好きだって言ってないのにバレたんだ?>と不思議に思った健太郎。

「俺・・・そんなに態度に出てますか?」
「うん。」
健太郎は小さなため息をつき関口を見つめた。

「俺負けませんよ。」
「俺だって譲るつもりはないよ。お互い頑張ろうな。」
余裕の笑みを浮べる関口。ちょっとおされ気味の健太郎だった。




関口はあの夜2人の人間を好きになった。
1人は当然咲子のことだが、もう一人は健太郎のことだ。
『好き』というより興味がある・・・と言った方が正しいだろう。
本気で付き合ってみたいと思っていた。



食事は咲子のおごりだった。
健太郎も関口も自分で払うと言ったが、それじゃ招待した意味がないと
言われ今回は素直にご馳走になることにした。

別れ際、優子は健太郎に「またあそぼうね!ぜったいだよ。」と言って小さな右手の小指を差し出した。
指きりげんまんだ。
健太郎はしゃがんで、優子の小指に自分の小指を絡ませた。

優子は嬉しそうに微笑んだ。








みんなと別れ、健太郎は家路を急ぐ。
カー助へのお土産も買った。カー助が大好きな駅前のケーキ屋のショートケーキだ。
人気のない住宅街に入った時、背後からバサバサと羽音がし、気配を感じる。

「カー助?!」
健太郎が振り返ると同時に、その肩に着地するカー助。

「よう!」
「カー助も出かけてたの?」
「まぁな。」
「・・・まさか俺のこと、つけてたなんて言わないよね・・・。」
目を細め訝しげに聞く健太郎。
「俺がそんなことする奴に見えるか?」
「見える。」
「即答だな。ま、その通りだ。」
「カー助ぇ〜。」
「お前のことが心配だったんだよ。愛だよなぁ〜。」

健太郎はふぅっとため息をついて、クスッと笑った。

「今日は楽しかったみたいだな。」
「あれ?他に言うことないの?絶対呆れられると思ってたのに。」
「ああ、お前の間抜けっぷりのことか?しょーがないさ。あれこそ健太郎なんだから。」

そんな話をしながらアパートに向かう。
あと1つ角を曲がれば目の前にアパートがある・・・という所に差し掛かった時
カー助と健太郎、同時に気配を感じる。



懐かしい気配。

故郷の匂いだ。

数メートル前方にあった電柱。
その陰から現れた少女。




健太郎は目を見開いた。


「キリー・・・。」


キリーはぞっとするくらい綺麗な笑顔を浮べる。

「こんばんは。田中健太郎さん。」

黒いワンピースの少女。肩には1羽のカラス、レイミがとまっている。

カー助は心の中で舌打ちした。
家に帰ってからなんて悠長なこと考えずに、もっと早く健太郎に説明しとくべきだった。
レイミから聞いた話が脳裏を過ぎる。

カー助はレイミを見つめた。
レイミは困惑し、焦っているようだった。


何も知らない健太郎。
久しぶりに会う魔法の国からの訪問者に、懐かしそうな笑顔を向ける。

「久しぶりだね、キリー。」
ケーキ多めに買っておいて良かった・・・などとのん気なことを考えている健太郎であった・・・・。

2001.9.28 

健太郎の間抜けっぷりに拍車がかかってきたな・・・(大汗)頑張れカー助、君だけが頼りだ!
・・・こんなお馬鹿な主人公に清き1票お願いします(涙)
次回健太郎活躍(?)することを願って・・・(←作者だろ自分!)