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死神からのラブコール


朝起きて学校行って、友達と話して、授業を受けて
学校終って帰る・・・・・いつもと何も変わらない平凡な1日。
学校の帰り道・・・自宅近くの横断歩道を渡るまで・・・そう思っていた。


渡辺由衣 17歳の高校生。小柄で中学生にしか見えないほど童顔。
とても可愛い顔立ちだが、少女・・・というより少年のような雰囲気を持っている。
髪が短いのも原因だろうが、何よりさばさばした性格がそんな印象を与えているのかもしれない。
活発で元気の良い彼女に夏の白いセーラー服はとても似合っていた・・・・・。

そんな彼女に目を奪われた一人(?)の楽天家がいた。


横断歩道の信号が青になり由衣が足を一歩踏み出したその瞬間
まるで金縛りにあったかのように・・・・体が動かなくなった。

『何・・・これ・・・』
声も出ない!!これが金縛りってやつ??うわぁ・・・初体験!!
・・・などと考えていると・・・・・・

目の前をすごい勢いで信号無視のワゴン車が走り抜けて行った・・・・・・。

「・・・あ・・・」
由衣の金縛り・・・ワゴン車と共に去って行った・・。


「あ・・・あっぶないなぁ・・・もし金縛りになんなかったら・・・引かれてた・・・」
心臓がドキドキした・・・。本当に危なかった・・・・。
由衣が・・・偶然に感謝!・・・しかけた時後ろから声がした。

「偶然じゃないですよ」

びっくりして後ろを振り返ると・・・奇妙な少年が立っていた・・・。
・・・年は由衣と同じくらいだろうか・・・へらっと笑ったその顔は
どこか・・のんびりした雰囲気を持ったごく普通の少年・・・・
では、何が奇妙なのかというと・・・その格好。
まるで魔女みたいな黒い服と黒い帽子をかぶり・・・・その背中には・・・・
白い羽がはえていた・・・・・・・。

由衣は目をパチクリさせた後・・・・・・おもむろに
「なかったことにしよう・・・・」
と、言って立ち去ろうとした・・・・・。現実逃避だ・・・。

「そりゃないっスよぉ〜!!」
慌てて由衣に追いすがる少年。変な姿をしているけれど、
『どんくさいお人好し』にしか思えないその雰囲気に由衣は恐怖を感じることなく
対応できた。

「あなた誰?」
「1285号です」
「・・・・・・・・」
ロボットか?こいつは!!会話を投げ出したい気持ちを必死で抑え言葉を続ける。
「何でそんな変な格好をしているの?」
「僕らの制服です」
「・・・その背中の白い天使みたいな羽は・・・・・本物?」
「本物ですよ〜!飛びましょうか?」
・・・と、少年は自慢気にバサバサと2、3回羽をはばたかせた。
「・・・あなた・・・天使?」
「そうとも言います」
「そうとも言う?」
「人間はいろんな呼び方で僕達を呼びますよ。天使、悪魔・・・・死神・・・」
由衣は・・・頭が痛くなってきた。何なんだこいつ!!
「あなた・・・いったい何なの?」

由衣の質問に少し言いにくそうに頭をかきながら少年は答えた。

「君の魂をあの世まで案内するはずだった『案内人』です」

由衣はすぐには理解できなかった。・・・あの世・・・て・・・。
少年はさらに話を進める。


「君は本当ならさっきの車に跳ねられて命を落とす予定だったんだ」

「・・・・予定って・・・・・・・・」
由衣は冗談にしか思えない話に・・・眩暈がした・・・・。
そうだ・・・これは冗談だ・・・悪い冗談!・・・いや!幻でも見ているんだ・・・・
疲れているんだ・・・きっと・・・・帰って寝よう!!
由衣は再び現実逃避するべく少年を置いて歩き出だした。





「僕から離れない方がいいですよ」


少しトーンを落とし・・・・でもやっぱりのん気な声で少年が言った。
由衣はゆっくり振り返り少年を見る。

少年は少し緊張した・・・・いや彼にしてはかなり緊張しているのかもしれない
表情で太陽が沈みかけ、夕焼けで真っ赤になった空を睨む。


「・・・たぶん、僕・・・クビだろうな・・・・・・いや・・・それだけじゃ済まないだろうな・・・」

少年は1つため息をつき、気を取り直すかのようにクスっと笑った。
そして由衣を見てニッコリ笑う。


「まあ、やれるとこまでやってみます・・・」



由衣は・・・その頼りない少年の笑顔を見ながら言った。

「・・・ちゃんとわかるように1から説明して・・・」

今後、こののん気な少年「1285号」が由衣にとって唯一の命綱となる・・・・・・


2001.4.25