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正義の味方番外編


銭湯で戦闘!


このお話は本編より昔に戻ります。

行久29歳 琴子39歳 里奈3歳 ・・・・の夏。

日曜の夕方、琴子がこんなことを言い出した。

「銭湯行きたい〜!!」

夕飯の支度をしていた行久の所へ琴子がやって来てそう言ったのだ。

「たまには手足伸ばせるおっきな湯船につかりたいんだもん!」
「銭湯ですか・・・良いですねぇ・・・やっぱりお風呂あがりには・・・」


琴子と行久、顔を見合わせて同時に「ビンに入った牛乳!」・・・と言った!

そんな2人の楽しそうな声につられて居間でテレビを見ていた里奈も寄って来た。

「せんとーてなんですか?」

琴子は里奈を抱き上げて言った。
「プールみたいに大きなお風呂のことよ!」
里奈は感動したように目を輝かせた。
「せんとーいきたい!」

全員一致で本日の銭湯行きが決まった。




「じゃあ、40分後にここでね!」
銭湯の番台の前で琴子が言った。ここで男湯と女湯が別れる。

「はい。じゃあね・・・」
と言って行久は男湯の方へ行こうとした時、里奈は当然のように行久の後をくっついて来た。
それに気がつき行久が慌てて言った。
「里奈はママと一緒だよ」

「いや!」
里奈は行久の足にしがみつく。
琴子が少し面白くなさそうな顔をして、ため息を付き、里奈を抱き上げて言った。
「ママと一緒に入ろうね!イチゴの牛乳買ってあげるから!」

琴子は足をパタパタして虚しい抵抗をする里奈を女湯へ連行して行った。
行久は少し不安そうにそれを見つめていた。

不安的中!
お風呂に入ると女湯の方から里奈の鳴き声が聞こえてきた。

「パパ〜!パパ〜!うぇ〜ん!!」

その声は紛れもなく行久を呼ぶ里奈の声。
里奈は1日中行久と一緒にいるのだ。
初めての銭湯。その上行久の姿が見えなくて不安になったらしい。

「里奈ってばお願いだから泣かないでよ」
今度は琴子の困ったような声。
他のお客さんのクスクス笑っている声やあやす声が聞こえた。


行久は初めは涙を飲んで黙っていた。髪と体を黙々と洗い、洗い場から湯船へと移動した。

「パパー!!」
里奈の鳴き声も湯船付近に移動してきてた。
ちょうどお湯につかったんだろう。
「里奈ぁ〜頼むから大人しくしてよー」
琴子も大弱り。

「お嬢ちゃん元気がいい泣きっぷりだねぇ」
「パパ大好きなのねぇ〜」

女湯から色んな人の声がする・・・・・行久はいたたまれない気持ちになって声をかける。

「里奈ぁ!パパここいるよ〜!」

行久の声が風呂場中に響いた。

「パパ!」
「ちゃんとここにいるから泣き止もうね!」
「うん!」

里奈の鳴き声が止まった。
やれやれと思って安心してお湯につかる行久。・・・・・が、

「パパ〜!おうた歌ってー!!」
う・・・歌?
行久はいつも里奈をお風呂に入れる時里奈の好きなアニメの歌や童謡を歌っていたのだ。
女湯のお客の人数はわからないが・・・男湯にはお年寄りが2人と中年の男が3人
若い兄ちゃんが1人・・・・。
行久は周りを見渡した・・・・・お客も行久がどうするのか気になるらしい。


「パパ〜!!パパ〜!!」
また里奈の声が鳴き声になってきた・・・。


行久は覚悟を決めた。


里奈の好きなアニメソングのメドレー。

懸命に歌いきった。

それはまさに・・・自分との戦いであった。




最後に「お騒がせして申し訳ありませんでした・・・」という言葉で締めくくった。


何故か拍手をもらえた・・・・・。











「せんとーたのしいです!!」
帰り道。上機嫌の里奈。
対照的に疲れきっている行久と琴子。
「ははは・・・良かったね・・・里奈・・・」
苦笑いしながら行久は言った。



「またあしたもせんとーいきたいです!」








それからしばらくの間、里奈の「せんとーいきたい」攻撃と戦うこととなった行久なのであった・・・。
2001.7.1

コメント・・・あはは・・。今日たまたま銭湯行ったので書いてみました(大汗)