「・・・あれ?」
会社から帰ると、いつも出迎えてくれるカー助がいない・・・。
健太郎が小首を傾げて部屋を見渡すと、テーブルの上に置手紙があった。
夜中、カー助は千鳥足で帰ってきた・・・。
しかも、とても上機嫌で、心配して起きていた健太郎の膝に乗り、話を聞いて欲しい素振りを見せる。
・・・そのくせもったいぶってなかなか話そうとしない。
「何だか楽しそうだね。カー助。」
「ふふふふふ。」
「良いことあったの?」
「うん。聞きたいか?聞きたいか?」
「うん。」
「じゃあ教えてあげようかなー。」
嬉しそうに健太郎を見上げ、話を始めた。
「俺、今日、すごく良いBar見つけたんだ♪」
「・・・Barって・・・まさか、お酒・・・飲んできたの??」
健太郎は目をまん丸くして驚いた。
カラスをお客として迎えてくれるBarがあるとは思えなかったのだ。
そんな健太郎の様子を見て、カー助はクスっと笑った。
「俺もビックリした。でも、俺、そのお店の前に立った時・・・不思議な感じがしたんだ・・・。」
「不思議な感じ?」
「うん。俺でも優しく迎え入れてくれるような・・・そんな安心感があった。
だから、緊張したけど思い切ってドア叩いてみたんだ。」
「・・・驚いてなかった?」
「ちょこっとだけ驚いてた。でも普通のお客様として迎えてくれたよ。
とっても親切だったよ。」
そして、カー助は幸せそうに思い出しながら、飲んだカクテルの話をする。
「どれも、すげー綺麗なお酒なんだ。飲んじゃうのがもったいないくらい。」
「へぇー。」
「もったいないけど飲んでみたら、『綺麗』に負けないくらい美味しいんだ。」
「で、飲みすぎちゃったんだね。」
健太郎はクスクス笑いながらカー助の羽を撫でた。
「健太郎。俺、思ったんだけどさ・・・。あのBarのバーテンダーさん達は、魔法使いだな。」
カー助は自信満々に言った。
「だって、あんなに綺麗で美味しいカクテル次々と作れて、楽しい気持ちにさせてくれるなんて、魔法だろ。」
「そうだね。」
カー助の言葉に、健太郎は優しく微笑む。
とても嬉しかったのだ。人間界で、話をするカラスを歓迎してくれた人達がいた。
カー助のことを、こんなに幸せにしてくれた人達がいた。
そのことがとても嬉しかったのだ。
「ねえ、カー助。そのお店に今度連れてってよ。」
健太郎の言葉にカー助は「うん。」と、言う代わりにコクンと頷いた。
・・・・そろそろ眠くなってきたようだ。
その様子を見て、健太郎は慌てて聞いた。
「カー助。そのお店の名前教えて・・・・・・・・・寝ちゃったね・・・・。」
カー助は親友の膝の上で、幸せな夢を見る・・・・・。
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