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こんぐらちゅれいしょん!

渡瀬先輩の結婚前夜・・・。
新居への荷物運びも終わり、明日結婚と共に独身寮を去る。
今日は俺もかなりこき使われた。

寮生活及び独身最後の日、渡瀬先輩は最後の夜を俺と飲み明かしたいと言う。
荷物もなくなり、後は身の回りの物と捨てる物しか残っていない先輩の部屋で2人だけの宴会。

・・・・・・やめときゃ良かったこの宴会・・・・・(泣)。





「いよいよ明日ですね〜どんな気分ですか?」
日本酒を飲んで少し酔っ払ってきている、俺、渡瀬先輩に今の心境を尋ねる。
「そりゃ嬉しいさ!明日から毎日藍ちゃんといられる!」
やっぱり酔っ払っている渡瀬先輩答える。
ちっ!幸せそうな顔して・・・うらやましい・・・・。
渡瀬先輩、鼻の下のばして笑っていたと思ったらいきなり深刻な面持ちになり言う。
「ただ1つを除いてな・・・」
「?」
「井原・・・お前・・・新居へ一緒に来ないか?」
「はい?」
「やっぱ一家に一台井原いないと仕事の疲れもストレスも解消されない」
・・・また訳のわからないことを・・・そう呆れていると渡瀬先輩は部屋にあった
大きな紙袋の中から・・・これまた大きなウサギのぬいぐるみを取り出す。


「これ、藍ちゃんから!」
渡瀬先輩はそのぬいぐるみを笑顔で差し出す。俺は・・・少しとまどい受け取った。
「・・・何ですか?これ・・・」
「ウサギのぬいぐるみだよ」
「そんなことはわかってますよ・・・何で俺にくれるんですか?」
「藍ちゃんがいろいろお世話になったお礼だって。手作りだぞ!」

・・・25歳の男にぬいぐるみ・・・・確かに可愛いが・・・・。
どう反応していいのかわからない俺に渡瀬先輩は言いやがった。
「誰も一緒に寝てくれる人がいないから抱き枕だって!」
・・・嘘だ・・・それは幸村さんの言葉じゃない。この悪魔(←渡瀬)の言葉だ・・・。
不機嫌な顔をしていた俺に渡瀬先輩はとんでもないことをしやがった。
「何だよその不服そうな顔は!!藍ちゃんからの贈物だぞ!!」
そう言って、捨てるものを入れていたダンボールからおもむろに
細いチェーンと南京錠を取り出した。


いきなりウサギのぬいぐるみの首にチェーンを巻きつけ、今度は
俺の腰にチェーンを巻きつけた。
「何すんですか!!」
一瞬遅れて抵抗した俺・・・・既に手遅れ。
チェーンを南京錠で外せないように固定しカギをかけられてしまった。

渡瀬先輩は意地悪そうに小さなカギを手にして言った。
「これでウサギさんと一心同体!」
・・・この酔っ払い!!
ここで嫌がればますます先輩を喜ばすだけだ・・・と俺は大人しくぬいぐるみと一心同体していた・・・。







窓から射し込む光がまぶしくて・・・俺、目が覚める・・・・・。
「・・・痛・・・」
頭が痛い・・・夕べ飲み過ぎた・・・・・・・。
俺の視界には・・・やっぱり床で寝ている渡瀬先輩の姿が目に入る。
朝か・・・・・・そう思い腕時計を見る・・・・・そして・・・血の気が引いた・・・・。



「先輩!!結婚式!!」

そう・・・新郎はとっくに式場に到着していなければいけない時間・・・。
渡瀬先輩は飛び起き、突風のように式場に向かった・・・・。


渡瀬先輩を見送り、ホッと一息・・・・・。
さて、俺もそろそろ準備しなければ・・・・と思い・・・・気が付く・・・・・・。



「カギ・・・・・・・」




俺は腰に巻かれたチェーンと可愛い顔のウサギのぬいぐるみを見つめ・・・途方に暮れた・・・・。






その日の俺は・・・・・頑張った・・・・。
頼まれていた友人代表のスピーチ・・・・必死で考えていた文章を速攻で変更し
・・・幸村さんのぬいぐるみを題材にした物にした・・・・。
何故って・・・カギは渡瀬先輩が持っていると思い込み式場で受け取ろうと思ったら
渡瀬先輩はカギを持っていなくて・・・結局ウサギのぬいぐるみは、結婚式が終って寮に帰り
先輩の部屋の隅に落ちていたカギを探し当てるまで俺と一心同体だったから・・・・。

1日中笑われ・・・「わざとですよぉ」
・・・と必死にごまかす俺を見て・・・・あの悪魔は笑っていた・・・・・。



いつか・・・復讐してやる!





でもまあ・・・・・・とりあえず・・・おめでとう!!
2001.4.29