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幸せの星(終)

あなたはどんなときも
わたしをあたたかなひかりでてらしてくれた
わたしにたくさんのげんきをくれた
あなたはわたしのこころのなかで
いちばんやさしくかがやく
わたしだけの・・・・・しあわせのほし

何もかも元の生活に戻ることが出来て、俺は忙しい毎日を送っていた。
正直仕事で忙しくしていた方が気持ちが楽だった。
企画課が忙しい部署で良かった・・・・。

今日は少し早めに仕事が終わったので一人で飲みにでも行こうかと
思いながら会社を出ると後ろから声をかけられた。

「井原君。暇なら飲みに行かない?」

振り返ると佐藤課長が立っていた。
ニコっと笑い「ねっ!」と首をかしげる。

俺が返事をする前に腕を掴まれ強制的に
近くの居酒屋へ連行された。

早く仕事が終ったといっても時間は既に夜9時をまわっていた。
居酒屋は酔っ払って騒ぐ客などでにぎわっていた。

店内の一番奥席につき日本酒とおつまみを頼んだ。

「とりあえず・・・・残業お疲れ様でした」
日本酒で乾杯・・・・・。

佐藤課長、お酒をひと口飲み、俺の顔をじっと見つめ・・・小さなため息をつく。
「あのね・・・井原君。貴方のことだからきっと山ほどいろんなことに巻き込まれて
きたんでしょうけど・・・・・・・・・その背中に背負った『落ち込んでますぅ』って看板
・・・外さない?」
俺・・・そんな看板背負ってたのか・・・・。
「・・・すみません」

佐藤課長、今度は大きなため息をつき、腕をくむ。
「あやまらないでよ。別に責めてるわけじゃないんだから」
「・・・すみません」
「だからあやまるな!!」

おでこを軽く小突かれる。
「何があったかは聞かないけれど・・・元気出してよ」

心の中でまたあやまる。
すみません。無理です。・・・そんな簡単に元気になれない。

「そんな貴方見てるとこっちまで落ち込んじゃうわ」
もう1つため息・・・。3回もため息をつかせてしまった。
すみません。
佐藤課長は気を取り直し言った。
「とにかく飲もう!!今日は私のおごり!!」
・・・そうだ・・・飲もう・・・飲んで・・・酔っ払っちゃおう・・・。
その間だけでも『落ち込んでますぅ』の看板下ろせるかもしれないし。





11時を過ぎる頃には俺は完全に酔っ払いだった。
こんなに酔っているのに・・・それでも時々心に浮かぶ・・・彼女の笑顔。

「ねえ、井原君」
「・・はい?」

頭がくらくらする。佐藤課長の声も遠くから聞こえてくるようで・・・あまりよく
聞き取れない。

「貴方の心の中にはどうやったら住めるのかしらね・・・」
佐藤課長が少し寂しそうに笑ってる。
でも何を言っているんだかよくわからない。

「貴方の心を覗けて、その方法がわかれば・・・どんな努力だってするのに」

佐藤課長・・・何でそんなに悲しそうな顔してるんですかぁ?・・・と
聞こうとして・・・でも眠くて・・・壁にもたれて・・・寝てしまった。

佐藤課長はそんな俺を見て、ちょっと意地悪そうに笑った。
「・・・もっとも、今の貴方なら簡単に堕とせるでしょうけど!・・・・・・でも・・・・フェアじゃないものね」

とても優しい声がする。
「ねぇ井原君・・・笑っていてよ・・・・」







こんなに辛いのに・・・苦しいのに・・・・それでも君に出会えて良かった・・・・。
君の笑顔はこんなにもあたたかく・・・・・幸せにしてくれる・・・・。

君が笑ってくれるなら・・・どんなことでもできるのに・・・・・・。
ただ・・・願うことしかできないの・・・・・・・?















季節は巡り、また春がおとずれた・・・・・・・。

春・・・桜が咲き乱れ・・・心躍る季節・・・・・・・。

でも相変わらず俺の春は・・・はるか遠く、どこにあるのやら・・・。






渡瀬先輩と幸村さん、5月に結婚することが決まった。
友人代表のスピーチを頼まれた。・・・積年の恨みを晴らすべく、何を暴露するか検討中!!
なんにしてもめでたい話だ!!
先輩はともかく幸村さんには思いっきり幸せになってもらいたい。
・・・まあ・・・この2人なら・・・勝手に幸せになるだろう!
・・・良いなぁ〜・・・結婚!



俺はというと・・・毎日頑張って働いています。・・・その他は特に変わったこともなく・・・
要するに・・・相変わらず彼女募集中!!


「井原君!悪いけど総務に企画課宛の急ぎの荷物が届いてるの。取りに行ってくれる?
重そうで男の人じゃないと無理なの!」
「はい!」
佐藤課長も元気一杯。前にも増してパワーアップしているようだ。



「企画課の井原ですけど・・・荷物取りに来ました」
総務部に行き荷物を受け取る。
ダンボール1箱!なるほど・・・重い!台車持って来れば良かったな・・・。


荷物を運びならがら廊下で新入社員と思われる団体さんとすれ違う。

各部署に挨拶にでも行くのか、研修でも受けに行くのか
研修課の課長に連れられて移動中。


「井原君重そうだね!」

課長に話し掛けられたので軽く挨拶。新人さんにも挨拶されるが
俺は荷物に気を取られてて顔も見ずにぺコっと頭を下げて歩き出す。








「井原さん」








すれ違った後・・・・・後ろから俺を呼ぶ声・・・・・・・。
この声・・・・忘れられない声・・・。今でも心が痛くなる・・・・・・。

俺はゆっくり後ろを振り返り・・・・・・声の持ち主を見つけた。






「お久しぶりです。井原幸太さん」






そこには・・・・髪を肩まで短くし・・・・元気に微笑む・・・彼女が立っていた。






「倉田・・・さん・・・」






「新入社員の倉田舞と申します!!よろしくお願いします!先輩!」
ぺこっと頭を下げ・・・俺の顔を見て・・・・・・微笑む彼女。


「あ・・・あの・・・よろしく・・・・・・」
驚いたのと嬉しいのと焦ったのとで上手くしゃべれず、おまけに完全に荷物の存在を忘れて
しまい、手から離れた重いダンボール・・・・・見事に俺の足の上に落ちた。


「痛ってぇ!!」



足の痛さは半端じゃなく・・・でも、そんなことより・・・・。



もう一度彼女に会えたことが嬉しくて・・・。



彼女の笑顔が見れたことが本当に嬉しくて・・・。




足をおさえてしゃがみ込む俺の元へ彼女が駆け寄る。






ようやく立てたスタートライン。





もう一度・・・頑張ろう。









君はどんな時も
温かな光でてらしてくれた
たくさんの元気をくれた
君は俺の心の中で1番優しく輝く・・・幸せの星だから・・・。









☆おしまい☆
P・S 足の指数本骨折したため即病院!!(泣)

2001.4.24 


業務連絡→後書きも読んでね! あとがき
(画像が多いので重いです・・・汗)